H17年4定島村質問に対する区長&理事者答弁
「未来輝く豊島区をめざして」平成17年11月

コンプライアンス条例

ただいまの島村高彦議員のご質問に対しまして、順次お答え申し上げます。

まず、コンプライアンス条例についてのご質問にお答えいたします。

まず、これまでの検討の状況についてお答えいたします。昨年の第3回定例会での島村議員の一般質問にご答弁をした後、昨年12月10日に議員協議会において、「公益通報者保護法の概要と今後の取り組み」について、担当課長よりご説明をいたしました。

本年に入り、国が公表しました「公益通報者保護法」のガイドラインなどの検討を重ねてきましたほか、内閣府主催の行政向け説明会などに関係課の職員を参加させるなどの取り組みを進めてきました。

「公益通報者保護法」などに見られるとおり、法令遵守に基づき区民に奉仕することの大切さを、職員がコンプライアンス体制の構築を通じて自覚していくことが、組織運営にとって肝要であります。

本区としましても、職員の非行・不適切な行為について、区民の皆様の目線に立って、常に衿を正して対応するよう努めてきました。

ご指摘の近江八幡市のコンプライアンス条例は、自治体として全国初の取り組みであり、本区としても関心を持ってきたところであります。

また同市では、アドヒアランスの推進についても検討していたことも承知しております。

アドヒアランスとは、医学の分野などで「納得されてこそ薬がきちんと服用される」という考え方であり、えてしてコンプライアンスが受動的になりがちとの傾向を補う概念として、近年注目されている考え方であります。

近江八幡市の「素案」では、具体的な手法として、パブリックコメントや職員提案制度の導入などが盛り込まれております。

本区では、既にパブリックコメントなど同様の取り組みを実施していますが、コンプライアンスの向上のためにも、今後こうした区民参加や職員参加を、更に重視していきたいと考えております。

議員が3点に要約されたように、人事配置や人材育成を通じて、区民の皆様に区政への信頼感と安心感をいかに実感いただくか、との理念を貫いていくことが大切であります。

また、コンプライアンスの推進にあたっては、公益通報者保護の推進や、暴力や脅迫などの不当要求防止対策の強化、更には、利害関係者との接触制限に関する取り組みなど、総合的な実効性の向上を図る観点が必要となります。

いずれにしましても、コンプライアンス条例案の検討に当たりましては、少々時間がかかっておりますが、ご指摘の点をはじめとする様々な観点から、他自治体の条例化の動向も踏まえつつ、まだまだ多くの問題を抱えておりますし、他の影響や奥深い要素もありますので、十分な研究検討を重ねていかなければならないと思います。条例制定に向けて努力していきたいと考えております。

 

防災対策

次に、防災対策についてのご質問にお答えいたします。

まず、防災訓練の現状と今後の対策についてのご質問にお答えいたします。

本区では、それぞれの地域において、誰でも参加できる防災訓練を、地域防災組織と協力し年間合わせて200回以上開催しており、一人でも多くの方が参加できるよう、努力しております。ご指摘の地域防災組織の認識度に関する調査は、残念ながらこれまで実施したことはありません。

また、訓練時の役割分担につきましては、救援センターで実施する地域合同の防災訓練においては、救援センター開設マニュアルに基づく図上訓練を実施するなど、会長や防災部長はもとより、庶務部や情報連絡部、物資調達部などの動きを確認するよう、訓練内容を工夫しております。一方、地域防災組織が単独で行う場合は、消火訓練や応急手当など実働訓練が主となっていますので、今後はそうした役割分担を確認できるような内容も加味していきたいと考えております。

なお、防災訓練に参加される方々に非常に若年層が少ないとのご指摘につきましては、重大な課題であると認識しており、今年度、区立中学校の3年生を対象とした普通救命講習を全校で実施するなど、地域防災における次世代の担い手を育成するよう努力しております。

今後、区としては、救援センターにおける地域合同の防災訓練の開催に、より一層力を注ぎますとともに、会場となる小中学校の保護者の方々には、訓練参加のご案内を差し上げるなど、多様な層の参加と住民相互の連携を促進するよう努力していきます。

次に、災害弱者対策と個人情報保護条例のあり方についてのご質問にお答えいたします。

災害時に援護を必要とする高齢者や障害者への対応については、基礎的自治体の最重要課題の一つであると認識しております。ご案内のとおり、現行の豊島区個人情報保護条例では、個人情報の目的外利用が禁止されております。区としては、個人のプライバシー保護に充分配慮することはもちろんでありますが、その方の生命を守るためには、平常時から防災セクションなどでも高齢者等の個人情報を活用することが必要であると考えております。

したがいまして、個人情報保護条例の改正を視野に入れ、来年1月に開催予定の豊島区行政情報公開・個人情報保護審議会に諮問するため、関係8課により構成する「災害要援護者対策検討委員会」において、鋭意作業を進めているところであります。

なお、地域における取り組みに関しては、地域の実情等も踏まえなければならず、他自治体の状況を調査しながら、現在、具体策について検討中であります。

次に、地域の総合力を生かした防災対策についてのご質問にお答えいたします。

ご指摘の地域の総合力とは、まさに地域コミュニティの活力そのものであり、防災分野においては、自助・共助・公助のそれぞれが合算された力であると認識いたします。「住民同士が団結する手立てを考えよ」とのご提案につきましては、区が実施する地域との協働事業は、全てそうしたきっかけになるものと考えております。先ほど申し上げました救援センターにおける地域合同の防災訓練も、地域の住民相互の連携を第一の目的として実施しているものであります。

また、事業所については、豊島区地域防災計画において、組織は組織で対応することを基本原則としておりますので、事業所はその社会的責務として、施設の安全対策や従業員の3日分の食料を備蓄するなど、従業員の安全確保に全力を尽くさなければならないとされております。豊島区内の事業所は、中央区や千代田区と比較して中小企業が多く、自助への取り組みがまだまだ不充分なところもあると考えております。区では現在、東京商工会議所豊島支部が主催する防災に関する勉強会に赴くなど、自助への取り組みの必要性について啓発に努めていますが、事業所の地域防災組織への協力については、各事業所のそうした防災対策への取り組み状況等も勘案しながら、今後、検討していきたいと考えております。

なお、災害時における学校の開錠については、安全が確認されない施設に入場することは極めて危険を伴いますので、救援センターの開設マニュアルでは、まず、一時避難場所として校庭を活用することとし、区・学校職員が地域住民とともに施設の安全確認を行い、その後、職員が開錠することとしています。

いずれにしても、区としては、今後も地域コミュニティの活性化に向けて、訓練内容のさらなる工夫を始め、様々な施策を実施していきたいと思います。

次に、防災メールの実施についてのご提案にお答えいたします。

携帯メールを活用した情報提供については、現在、不審者情報などを中心に実施しておりますが、今後につきましては、救援センターにおける地域合同防災訓練の開催のお知らせや、地震・火災情報、震災対策のワンポイントアドバイスなど、積極的に活用していきます。

 

AEDの設置

次に、区有施設におけるAEDの設置についてのご提案にお答えいたします。

議員のご指摘にもありますように、巣鴨一丁目町会におかれましては、町会費によりAEDを自主的に購入し、巣鴨駅南自転車駐車場に設置いただきました。大変ありがたいことと感謝しております。また、高岩寺内及び巣鴨地蔵通り商店街周辺にも高岩寺のご提供により計5台のAEDが設置されております。

そのほか区の施設としては、本庁舎1階および池袋駅東口の新たに開設いたしました「観光情報センター」に設置しております。

AEDは救命救急にたいへん効果が大きいと考えていますので、財政状況の厳しい中ではございますが、救命救急等についての講習を進めるとともに、地域的な均衡も検討しながら、できるかぎりの設置に向けて努力してまいりたいと考えております。

なお、その他の質問につきましては、関係部長から、教育委員会の所管に属する事項につきましては、教育長から答弁申し上げます。

 

「育児支援家庭訪問事業」

次に、子育て支援についてのご質問にお答えいたします。

まず、「育児支援家庭訪問事業」についてのご質問にお答えいたします。

育児支援家庭訪問事業については、ご指摘のとおり、先駆型子ども家庭支援センター事業の一環として、平成18年度から実施を予定しているものであります。

主に産後の育児及び養育に支障がある家庭に対し、保健師や保育士が訪問による相談、支援を行い、必要な場合には育児や家事の援助者の派遣を予定しております。

18年度は事業の初年度でもあることから、相談については知識及び経験が豊富で心理学的側面からの援助が可能な職員の訪問により、また、家事等のヘルパー派遣については、他区においても実績のある民間事業者に委託するなど、慎重に対応していきたいと考えております。

効果的な事業の実施に向けた詳細については、今後鋭意検討していきます。

次に、仕事と育児の両立支援についてのご質問にお答えいたします。

次世代育成支援に関する取り組みについては、法にも規定されているように、国のみならず、地方公共団体の責務でもあります。

平成16年12月に策定された国の「子ども・子育て応援プラン」においては、職場優先の風土を変え、働き方の見直しを図ることが求められております。

本区としても、事業所に対する啓発事業の実施にあたっては、国及び都の施策を踏まえ、育児休業制度等についての取り組みの推進などに向け、今後検討していきたいと考えております。

次に、虐待の問題についてのご質問にお答えいたします。

本年3月、東京都から発表されました「東京の児童相談所における非行相談と児童自立支援施設の現状」によれば、非行相談のおよそ4件に1件の割合で被虐体験があるという結果になっております。非行の元凶ともなる虐待については、予防、早期発見・対応、援助が何よりも重要となります。

本区においては、子ども家庭支援センターにおいてあらゆる児童相談に応じるとともに、これまで全力で取り組んできました「豊島区子ども虐待防止連絡会議」を、この4月からは児童福祉法に基づく「要保護児童対策地域協議会」として位置づけ、虐待防止ネットワークのさらなる強化に取り組んでいるところであります。

一方、子どもの権利条例案に盛り込むことを考えております「子どもの権利擁護センター」を開設し、権利侵害からの救済を図っていきたいと考えております。

巣鴨駅前における客引き対策

次に、巣鴨駅前における客引きの状況についてお答えいたします。繁華街における悪質な客引きやスカウトなど路上での迷惑行為摘発強化のため、東京都迷惑防止条例が一部改正となり、本年4月1日から施行されました。

これに伴い、池袋駅東口・西口においては、地元商店街の環境浄化推進委員による「環境浄化パトロール」がより一層強化されました。また地元警察署では、これまで以上に集中的な取り締まりを実施した結果、池袋駅周辺で19名、巣鴨駅周辺では8名の客引きが検挙されております。

このような活動により、悪質な客引きは、一旦大幅に減少しましたが、半年経過しますと、客引きが再び姿を見せはじめ、議員ご指摘の巣鴨駅前においても同じ状況であることは承知しております。

本区としては、巣鴨駅前をはじめ、繁華街を  管轄する警察署に対し、引き続き積極的な取り締りを要請していきますが、このような悪質な「客引き」や「キャッチ」は、警察の取り締りだけで排除できるものではありません。やはり地域住民による地道な自主防犯活動も  不可欠であると考えます。したがいまして、これまで相当な効果を上げている「池袋環境浄化パトロール」をモデルとした巣鴨環境浄化パトロールを実施していただくよう、警察署とも力をあわせて地元商店街等の皆さんに働きかけを行なっているところであります。

 

「総合的な学習の時間」の効果と今後の展開

引き続きまして、教育委員会の所管に属する事項に関するご質問に対しましてお答えいたします。

まず、本区の「総合的な学習の時間」の効果と今後の展開についてのご質問にお答えいたします。

本区の総合的な学習の時間においては、例えば、豊島区の友好都市である山形県遊佐町との連携により実施している稲作などの栽培体験を通して食べ物の大切さを学ぶ学習や、「藍染め」の体験学習から日本の伝統文化を受け継いで仕事をしている方の思いを知り、ものづくりの厳しさや楽しさを理解させる学習、また、地域の高齢者施設等への訪問やそこで出会うお年寄りとのふれあい体験から、自分たちの生き方について学ぶ学習などを行っております。このほか、身近な地域の環境や町の様子などの調査、地域の商店等での職場体験、小学校5・6年生の英語活動など、各学校ごとに児童・生徒の実態や地域の特色などを踏まえた指導計画を作成し、創意工夫のある実践に取り組んでいるところであります。

昨年度、豊島区立小学校教育研究会が、小学校6年生880人にアンケート調査を行ったところ、「総合的な学習によって、身に付いた力は何か」についての設問に対して、「友達のよさに気付いた」「目的に応じて必要な情報を選べるようになった」「自分の力で調べる力が付いた」が上位3位となり、それぞれ80%以上が「そう思う」と回答しています。次いで4位が「地域や学校で大人とあいさつや会話をすることが増えた」と回答しております。このことは、豊島区における総合的な学習が、地域社会との関連を重視し、様々な人とかかわる機会を多く取り入れている成果であると考えております。さらに、児童・生徒が自ら調べてまとめたり、発表したりする力や思考力・判断力・表現力を育成するとともに、近年とみにその低下が指摘されている学習意欲の向上に大いに役立っている結果であると捉えております。

次に、今後の展開についてですが、昨年末に発表された「OECD生徒の学習到達度調査」の結果によりますと、日本では「読解力」が低下していることが分かりました。ここでいう「読解力」とは、国語科における読む力はもとより、ものの見方や考え方、様々な状況においてそれらを活用する力のことを指しており、まさに「総合的な学習」で身に付けさせたい力と一致するものであります。「総合的な学習」は、体験活動を重視した学習ですが、実施に当たっては、その活動によって子どもたちにどんな力を付けるのか、具体的な目標を定めるとともに、各教科で学んだこととの関連を図ることが重要と考えております。

そこで、教育委員会といたしましては、ご指摘のとおり、目的をもって「自分ごと」として没頭できるような総合的な学習を、今後とも一層充実させるため、これまでの実践から効果的な取り組みを紹介するリーフレット等を作成し、豊島区の地域の特色を生かした取り組みを一層推進するとともに、小・中学校の連携を深めたカリキュラムの充実を図ってまいります。

 

中学生の職場体験事業

次に、中学生の職場体験事業についてのご質問にお答えいたします。

職場体験は、ご指摘のとおり、将来の進路を考えたり、社会奉仕の精神を養ったりすることで、正しい勤労観を培うことができる取り組みです。

本区では、今年度、全中学校において、1年もしくは2年生の生徒が、3日間程度、のべ260箇所の事業所の協力を得て、実施いたしました。体験を終えた生徒からは、「仕事の大変さを実感した。大人を見直した。」とか「今まで仕事に興味をもっていなかったけど、将来の自分の仕事について考えていきたい。」などの充実感を伴なった感想があり、中学生にとって、かけがえのない貴重な体験であることを改めて認識しております。

また、職場体験の今後の取り組みについてでありますが、東京都教育委員会では、中学校2年生に可能な限り連続5日間の職場体験を推進する方向がありますが、本区におきましても、教育計画全体を勘案しながら、できるだけ実施日数を増やす努力をしてまいりますとともに、協力いただける事業所をさらに開拓するよう取り組んでまいります。そして、職場体験を体験だけに留めず、各学校の進路指導の中に適切に位置づけ、「人間関係形成の能力」「情報活用の能力」「将来設計の能力」「意思決定の能力」などの育成を図り、夢や希望をはぐくむ教育を行ってまいります。

 

読書活動の推進策

次に、子どもの読書活動の推進策についてのご質問にお答えいたします。

昨年の第4回定例会におきまして、公明党の高橋佳代子議員より、豊島区における子ども読書推進計画策定のご提案をいただき、教育委員会では今年度「豊島区子ども読書推進計画」の策定作業に着手しております。今年度末には策定を終了する予定ですが、本計画を豊島区の子ども読書推進策の基本方針にしていきたいと考えております。内容は、読書活動の普及啓発、読書に親しむ機会の提供と読書環境の整備、家庭・地域・学校等との連携協力といった3点を柱に定めていく予定です。特に計画の策定過程では関係機関との協議のほか、「読み聞かせ運動」や「朝の読書活動」を支えてくださっている地域の方々のご意見も伺うなどして、子どもの読書活動を推進するため、区と区民の協働をより一層高め、実効性の高い計画にしてまいりたいと考えております。

また、ご指摘の通り、学校図書館だけでなく地域図書館も、子ども達の読書活動を推進していく上で重要であると考えております。これまでも地域図書館は学校図書館の支援をするなど、地域のセンター機能を担ってまいりました。図書館の再構築後も、学校図書館支援や地域のボランティア育成、家庭や地域での読み聞かせ実践の支援を地域図書館が担うようにしてまいります。そして、子ども読書推進計画の中身を実りあるものにし、「読む力、書く力、そしてこれらの力を基礎とする言語に関する能力」を子ども達がしっかり身に付けられるようにしていきたいと考えております。

次に、プロとしての教育マンの力を学校だけでなく、家庭や地域にも発揮していくべきとのご意見についてであります。

私はかねてから、「教育は、ものづくりでない、人づくりである。」ということを重視して、取り組んでまいりました。また、教育改革としてどのような施策を打ち出したとしても、最終的にはそれにかかわる教員の力がその成否を分けることになります。そのため、教員研修会の充実などにより、教員としての資質や実践的な指導力などを向上させるとともに、教員のプロ意識や自らの使命感などをより一層高めることが重要であると考えております。

また、よりよい教育を行っていくためには、学校の力だけでなく、保護者や地域社会との連携も欠かせません。豊島区では、過日、東京都の学力向上調査の結果を受け、PTA連合会から「子どもに朝食を食べさせよう」という発信がありましたが、今後も、学校がすべきことと家庭や地域がすべきことを明らかにしながらも、それぞれがこれまで以上に連携を強め、かかわっていく必要があると考えております。学校の教員は、授業で子どもを教えることが中心の職務でありますが、可能な限り、家庭や社会とかかわる機会を増やしていくことは、大切なことであると認識しております。そして、互いの信頼関係を築いたうえで、子どもをよりよく育てるために、ときには、家庭や地域に対して問題点をはっきり指摘してサポートができる、苦言を呈するような力量をもった教員を育て、未来からの使者の教育に努めてまいる所存であります。

以上をもちまして、島村高彦議員のご質問に対する答弁を終わります。