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「“安心としま”の地域施策について」

平成21年2月24日登壇

発言通告にもとずき、一般質問させていただきます。今回は、「“安心としま”の地域施策について」と題し、1、不況経済対策と平成21年度予算案について、2、今後の財政運営と重要施策について、3、地域マネジメントについて、4、地域振興について、5、その他について一般質問します。

日本をとりまく世界的景気動向は昨秋から急速かつ大幅に降下しつつあります。グローバルなインターネット社会が、世界経済を同時にブレーキを踏ませ、世界同時不況という台風並みの逆風にさらされています。日々の新聞紙面には大手優良企業の、歴史的な経営悪化の情報が飛び交っています。

そして漏れてくるのは、大手電機メーカー2万人、自動車メーカー最大手企業が2万人、「派遣切り」でとどまらず、正規社員のリストラ計画が次々と発表され、完全失業率が過去のピークであった02年の5.4%を超え、7%前後にまで上昇する可能性が高いとみられています。

先進諸国はじめ、世界各国もこの不況脱出のため、様々な知恵を絞って自国の景気浮揚策を懸命に打ち出して、国民の生活をなんとか守るために全力を挙げています。

我が国でも、政府は、緊急に対応すべき対策として、いわゆる”3段ロケット”で75兆円規模の総合的な経済対策を打ち出し、生活支援策、景気浮揚策に懸命取り組んでいます。

この難局に当たって、我がまちの政治や行政に取組む使命と責任は何か。取りも直さず「市民の生活を守り、雇用を守る」事に尽きます。未曾有の経済不況に立ち向かう、高野区長のリーダーシップのもと未曾有の地域政策の展開が今ほど要請されている時はありません。対策の成否を握るのは規模だけではなく、実行力とスピードも必要になると思います。

経済対策と平成21年度予算案
そこでまず、大きな1点目、本区の経済対策と平成21年度予算案について伺います。

まず、(1)昨年後半からの世界的な景気後退の波が我がまちの地域経済に、どのように押し寄せているのか、区民の生活実態について、高野区長のご認識を伺いたいと存じます。

次に、政府が取り組んでいる、いわゆる75兆円の経済対策と本区の取り組みについて伺います。①第2次補正予算の目玉は「定額給付金」と「子育て応援特別手当」であります。様々な論議がありますが、給付つき定額減税は世界の潮流であり、「今か、今か」と胸躍らせる庶民の期待に応えるべく、早期かつ円滑な給付のために、今後のスケジュールと、地域経済活性化に繋げるべく区長の決意とその具体策を伺いたいと思います。特に「子育て応援特別手当」については、受給資格のあるご家庭でも、未だ知らないで私どもに問い合わせてくる区民もいることから、細かく周知徹底に努められたいと思います。本区の取り組み状況をお聞かせ下さい。

さらに、②中小企業支援では、緊急保証・セーフティネット貸付枠30兆円のほか、金融機関への資本注入枠も10兆円追加、省エネ設備投資の減税や中小企業への税率引き下げもあり、これだけを合わせても40兆4300億円の規模になります。このほか、「銀行等保有株式取得機構」の活用・強化で20兆円が計上されています。

このような動向をふまえ、昨年後半からの本区の中小企業支援策の今までの成果と、今後の取り組みについてお教え下さい。

緊急に取り組むべき経済対策とともに、平成21年度本予算案は、今後数年にわたって続くであろう景気後退時代の施策にとって大きな意味があると考えます。区長召集挨拶では、「財政調整基金を含め、急転直下41億円もの財源不足が明らかになっての予算編成であった」と述べられています。各事業への詳細は予算委員会で議論させていただきますが、ここでは、今年度予算編成の特徴と大きな危機に立ち向っていく上での事業展開についての基本的な御考えを伺います。更に、状況が厳しい時代だからこそ、一層の行財政改革に取り組むことは、多くの区民の声であると認識します。民間企業では既にワークシェリングや業務改革に取り組まざるを得ない状況が連日マスコミ等で報道されています。今年度予算案における行財政改革への取り組みをお聞かせ下さい。

また、一方では、急速な経済の冷え込みは、社会的弱者といわれる高齢者や障害者にしわ寄せがいき、そしてその影は、女性や子どもを後ろ向きになり、下を向かせてしまいます。経済状況が厳しい中、高齢者や障害者、女性、子どもに対してどのようなセフティネットで取り組まれるのか伺います。
今後の財政運営と重要施策

大きな2点目、今後の財政運営と重要施策について伺います。

急激な経済危機を背景にした先行き不透明な時代にあって、区民サービスの低下を招くことなく、過去の負の遺産である、借金の返済、財政の健全化を図ることは並大抵の努力ではできえません。20年、30年先の将来世代に確たるとしまを引き継ぐため、改めて現下の経済情勢を鑑みて、従来の財政健全化方針と今後の取り組みについてどうお考えなのか、区長のお考えをお聞かせ下さい。

私どもは、今後の区民の切実な生活状況を考えた場合、生活支援のための財政出動を強く望む声もあるのも事実であり、財政運営について、臨機応変に取り組んでいくべきであると考えます。また、こういう時代だからこそ、政策決定過程、政策判断の区民への説明責任は今まで以上に増してくると考えます。区民への財政運営、財政判断に関する一層の情報提供をどう行っていくお考えなのか伺います。

急激な経済状況の悪化の中で、区民の大きな注目のひとつに、新庁舎建設問題があります。再開発組合の関係者は、この再開発の成功を祈るような思いでおられると思います、しかしながら、計画スタート当初の経済状況と現在では大きな環境変化が見られます。将来に負の遺産を残すようなことは絶対避けなくてはなりません。現在の社会経済状況の中で、新庁舎建設について「従来のままでいって、本当に大丈夫なのか?」という心配の声が上がっているのも事実であります。また、ある不動産関係者からは、現庁舎跡地の民間活力を導入した計画についても、決して楽観できる状況にないとの声があります。そこで、改めて伺います。現庁舎周辺の再開発計画と新庁舎建設について、現下の経済情勢を鑑みて、どう認識されておられるのか?また、経済状況が一層悪化された場合は、計画の見直しを図る勇気も必要と考えます。区長のご見解を伺います。

次に、この経済危機を、逆転の発想で、大いなる飛躍のチャンスととらえ、新たな地域の特色を生みだす努力も必要と考えます。厳しい経済状況のなか、今後の社会の展望を開くカギは「環境」と「農業」だともいわれています。アメリカでも「グリーン・ニューディール」へと大胆にカジを切ったオバマ米大統領の登場もあり、世界の潮流になりつつあります。ある統計によると現在の環境ビジネス規模は70兆円、140万人の雇用があると言われ、その規模がこの数年で数倍に拡大されるとの観測もあります。

本区では昨年、人口密集度が日本一となり、いやが上にも都市型環境施策への取り組みが望まれる状況にあります。今まで高野区長は、強いリーダーシップのもと、「環境都市豊島」への取り組みを様々提案され、区民にも定着しつつあることは大いに評価するところであります。そこで伺います、今後の本区の環境分野を軸とした「緑の社会への構造改革」「低炭素化社会」についての区長のご見識とともに、この時代だからこそ、環境をベースにした、経済活性化と雇用創出にむけての、我がまち豊島の取り組みについて、伺いたいと存じます。
地域マネジメントの一層の推進

続いて大きな3点目、地域マネジメントの一層の推進をという観点で質問します。先日、区議団で、私の生まれ故郷、三重県松阪市の朝見地区の地域マネジメント・住民協議会の取り組みを視察してまいりました。2月8日の市長選で全国最年少33歳の市長を誕生させたばかりの松阪市は、平成の大合併で人口が約18万人、伊勢湾に面する海岸線から、吉野桜で有名な奈良県吉野地域と接する広大な自治体となりました。

本区では既に、自治基本条例の策定をみていますが、松阪市は、現在、有識者からなる検討会で条例制定の議論を纏めている最中で、この春には条例提案される予定です。平成15年、前市長の提案で、地域の課題は地域で決める、地域コミニュティつくりが開始され、翌平成16年には市民懇談会が開かれ「地域マネジメント構想」が始まり、平成17年には準備委員会が発足しました。

私達が訪れた朝見地区は人口約2,200人、世帯数約600。10の町会・自治会で構成されています。人口流動は殆どなく、典型的な農村地域です。松阪市の地域マネジメントの単位は、市内にある25の小学校区地域を単位として考えられています。

言うまでもなく、従来からある、町会・自治会、婦人会、敬老会、PTA、公民館運動、小規模ボランティアグループ、民生児童委員、消防団、それぞれの団体から、代表を出してもらい、地域協議会を構成し、防災部会、防犯部会、福祉部会、地域環境部会、青少年育成部会、そして専門部会と7つの部会に分かれ運営されています。現在では朝見地区協議会ニュースを年4回発行して、内外の方に協議会の存在、価値を紹介しています。地域の課題を出し合い、課題解決に向け、それぞれの団体がそれぞれの特色を生かして、手作りの地域づくりに取り組んでいます。

この朝見地区では、現在事務局長の鈴木さんが、いち早く、住民の住民による町づくりとの市長の提案に反応され、まず一人立ち、市まちづくり推進課長さんらと地域協議会について、何度も意見交換し、手探りで開始されました。案の定、最初は「町会と協議会とどちらがえらいんや!」との自治会長さんを相手に、膝詰めで意見交換をし、地域協議会の役割、時代の流れを話し合ううちに、元町会長経験者や、現役町会防災部長ら協力者が2人、3人とあつまりだし核ができました。10ある町会・自治会に2年間、町別、団体別に説明会を開催していきました。

私が、一番驚いたことは、この地域協議会の説明は、殆ど鈴木さんら協議会の方々が手分けし、分かりやすい資料をパワーポイント等で手作りで作成し、何度も何度も説明会を開催して、少しづつ理解を深めていったことです。

平成18年7月念願の設立総会を迎え、1、自ら考え、立ち向かうまちづくり。2、地域の声が反映するまちづくり。3、行政と協働し、よりよい地域を創造するまちづくり。の基本理念を採決し本格実施に至りました。

協議会の理解を広げる一つのきっかけは、ある家の愛犬が行方不明になってしまい、地域協議会の人に相談したところ、協議会の各部会から各町会・自治会、敬老会、PTA、消防団に情報が伝わり、まもなく、愛犬を発見でき、みんなで成功を喜びあったところから始まりました。その内、大震災を想定した防災部会から、防災訓練を各町会ごとにやるのではなく、小学校区域全町会・自治会挙げてやる機運が高まり、第1回の防災訓練には、約750名が参加し、消防団の応急救護指導、婦人会合同の炊き出しなどで、大盛況であったそうです。

その他、福祉部会では、認知症高齢者、徘徊高齢者への応対方法を市保健師さんから数回受講し、実際、徘徊している高齢者を地域の方が、じっくり話を聞いて、一緒に家に帰ってあげたり、防犯部会では、子どもを狙う不審者が出没したとう情報をPTA、学校からもらうと、すぐさま、パトロール隊を結成し、登下校時に車・バイク自転車でのパトロールや、畑、田んぼ仕事をしている方が、児童に声をかける運動を行っています。協議会の防犯部会が中心になってからは、以後、不審者情報がなくなったりしています。

この朝見地区協議会の取り組みは、三重県内はもとより、広く日本全土にわたって有名で、鈴木事務局長さんは、各地で講演会やシンポジュームの講師に引っ張りだこだそうです。

また、市まちづくり推進課長さんからは、現在検討中の自治基本条例にはこの地域協議会の運動を柱として、各地域協議会で議論された各地域の町づくりの方向性を、松阪市基本構想・総合計画に盛り込み行政としての地域計画に位置付けていく事。また、当面の市からの協議会への要望は、公民館の運営を指定管理者として、契約して、運営してもらいたい、とのことで、現在、事務的な詰めを行っているとの事でした。

鈴木事務局長さんから、事業開始当初からの苦労話を伺うにつれ、住民が主役の地域作り、地域マネジメントという理想はよくわかるものの、江戸時代から何百年間続いてきた、住民の、村意識、おやかた日の丸主義はそう簡単に変わるものではないということを実感しました。いまだに、旧態以前の住民意識と闘っておられます。

朝見地区協議会の成功例から学んだ事は、①まず、自分たちの地域は自分たちで守り発展させていくという地域づくりの意識を強くもった人が立ち上がること。②既存の団体に地域マネジメントの意識啓発を丁寧に、繰り返し住民自ら行い、住民主体の組織を少しづつ作っていくこと。に尽きると思います。

花の都東京から約500K離れている地方都市の三重県の松阪市朝見地区と本区を比べると、人口流動の多い都市と若者が年々少なくなる農村という大きな環境の違いはあるものの、本区でも朝見地区協議会に負けない、地域マネジメントに成功しているみらい館大明などの実例があることも承知しております。また、本区は他自治体に先駆け、住民自ら地域の街づくりを進めていく「自治基本条例」を策定し、自治推進に先進的に取り組んでおり、自治推進委員会では、各界の有識者と区民代表が、都市型の自治推進に真剣に取り組まれていることは大いに評価するところであります。委員会では、中学校区を一つの単位として、地域協議会による地域マネジメントを視野に入れ、池袋中学校区地域をモデル地域として、地域の課題を協議会で議論し、その方向性を区の地域づくりに反映されていくとの試みが来年度から始まるとのことであり、その動向に大いに注目したいと思います。

また、地域協議会を構成する枠をもう少し細分化し地域コミニュティ作りを中心に取り組んでいる「区民ひろば」構想も、立ち上がりからある程度時間が経過し、従来の町会代表、青少年育成代表だけでなく、地域住民による地域の町づくりに力を貸して下さる人材も少しづつでてきていることは喜ばしいことであります。

そこでまず、自治基本条例制定から今日まで取り組まれてきた、本区の自治推進について、区長の基本的な認識を伺います。さらに、今後の自治推進を進めるうえでの課題についてとどうお考えなのか伺います。また、地域コミニュティ中心の「区民ひろば」が開始されましたが、本区の「区民ひろば」についての成果と今後の課題について伺います。

本区の地域協議会は、中学校区とされていますが、そのエリアは数十の町会に亘り、対象人口は2万人から3万人と膨大な区民をかかえることとなります。地域コミニュティ中心の「区民ひろば」との連携強化はかかせませんが、「区民ひろば」と「地域協議会」の役割分担についてどうお考えなのか伺います。また、自治推進の人材育成についての取り組みと今後の方向性をお聞かせ下さい。

私は、昨今の厳しい経済情勢の中だからこそ、住民が生活の場としている地域の様々な課題について、地域住民自らが課題を見つけ、課題に取り組む事が、なによりも大切なことだと考えます。今後、ますます進む少子高齢化時代にあって、豊島区が自治推進・協働に一層取り組まれることを強く期待します。

地域振興における、官と民の協働

続いて大きな4点目、地域振興における、官と民の協働について伺います。前述しました、地域協議会の視察と同日、松阪市に隣接する三重県多気町の高校生が運営するレストラン「まごの店」と昨年秋オープンした「せんぱいの店」=食を題材にした学校と地域、そして町・行政が協働した町興しの取り組みを会派で視察しました。

多気町は人口約1万6千人、昭和60年代に大手液晶メーカーの工場進出により飛躍的に財政が好転しましたが、同社が亀山市に生産拠点を移してからは、右下がりの状態が続いています。

県立相可高校は創立明治40年の歴史ある学校です。普通科だけでなく、測量士等を育成し、松阪牛を育てるなどの農業土木科、バイオ・環境科学の生産経済科そして、最近全国的に注目を浴びている、調理の技と心を学ぶ、食物調理科がある総合的な県立高校です。ちなみに私は昭和53年同校普通科の卒業生です。

「まごの店」は三重県出身の専門調理師村林先生と多気町の行政マン、企画調整課岸川さんの出会いから始まります。大阪の大手調理師専門学校の売れっ子指導者で、私の同世代の村林先生が、心機一転、自分の故郷に自分なりに恩返しをしたいとの気持ちで、平成14年相可高校の食物調理科の専門調理教師として赴任されました。先生は、一流の料理人になるための“技”は教えられるが、①コスト計算、コスト管理。②接客ができない。などの点で、学校の授業の限界を感じておられました。

一方で、多気町の企画調整課岸川さんは、行政マンとして、地域興し、街づくりに独特の観点から仕掛けや、アイデアを提案してきた人です。岸川さんが手がけた一つの事業として有名なのが「134時間町民ソフトボール大会」です。選手が一度交替したら二度と試合に参加できないルールで、大勢の町民が選手として参加。おりからの低気圧接近で、時折暴風雨の中、守備が終わると、ベンチで座るのではなく、テントが飛ばないように支柱を皆で支えあいしながら、ついに134時間のソフトボール大会を完遂させ、ギネスブックに輝かしい歴史を残されました。これには、多気町民だけではなく、多くの周辺ボランティアの協力を得ることができ、町民と行政とボランティアの総合力でなし得ることができ、町民の自信、誇りになりました。

「まごの店」が誕生したのは2002・平成14年、相可高校の熱い調理師、村林先生と生徒を応援したいと、自然レジャー施設「五桂池ふるさと村」の一角に調理実習施設としてオープンしました。すでにあった地元の野菜を販売する「おばあちゃんの店」の向かいに孫世代の高校生が運営するとのことで「まごの店」と命名されました。2003・平成15年には文部科学省が実施する「目指せスペシャリスト」事業の指定校に相可高校が選ばれました。この事業は高度な先端技術を学ぶ高校生を支援するもので、これをきっかけに多気町としても一層同校を応援しようということになり、仕掛け人岸川さんのアイデアで、なんと高校生が運営するレストランを建築することになりました。建物は建築家を目指している県内の工業高校生が設計し、2005・平成17年に総額8900万円をかけた「まごの店」が建てられました。

「まごの店」は高校の部活動として生徒が授業外にやることから、店の営業日は、授業がない、土日祭日や夏休みにかぎられています。逆に言うと、平日は全く使われていません。営業日は、連日大盛況で、決められた250食は約1時間で予約完売となります。食材については、地元で採れる野菜はもちろんのこと、魚・肉の食材業者も「頑張っている生徒さんのために」と最高のものを持ってくるなどまさに街ぐるみで、盛り上げているとのことです。更に、地域高齢者への安心のお弁当配食や町内の小学6年生の卒業祝に、本格テーブルマナーを経験させてあげようということで、高校生が本格フランス料理を作り、先生が児童にテーブルマナーを教えたり、地元テレビ局と協働して、欽ちゃんの野球チームの試合場の弁当を600食作ったり、あちらこちらから引く手あまたの状態です。

県立の高校がレストランを運営するにあったては、常識的に幾つかのハードルを超えなくてはなりません。食中毒の対応、生徒の労働賃金などなど、三重県教育委員会がすんなり許可することは考えられません。そこで、企画調整課の岸川さんは、3者の覚書という裏技を考案しました。相可高校とふるさと村、多気町の3者で覚書を締結して、それぞれの団体のトップを説得して、開始させたそうです。スタートしてから、口コミで評判がではじめたとき、丁度時期を同じくして、乳製品の表示偽造などマスコミで食品偽造のニュースが大きく取り上げられ「食の安全」についての国民意識がたかまり、テレビ、新聞などのマスメディアが一斉に、「まごの店」に取材にきて、一躍有名になりました。生徒の腕前も、名調理師村林先生の指導のもと、全国の料理コンクールで、数々の賞を受賞し、同校食物調理科の入学希望者は年々増加してきています。このような盛り上がりに、三重県教育委員会も様々な支援をされているとのことです。

ある経済誌の試算によると、「まごの店」と多気町のマスコミを通しての宣伝を金額に換算すると、10億円とも15億円ともいわれており、最新の情報では、「まごの店」の先生と生徒をモデルにした映画製作の話も進んでいます。

「まごの店」の卒業生は、各地で大活躍。一般的に板前修業は5年、7年が当たり前のところ、大阪や京都の一流の老舗でめきめきと頭角を現しているそうです。更に、昨年からは、卒業生の実力を有効に活用したいとのことで、同校の同窓会、多気町や大学、地域が連携し地産地消で惣菜やお弁当を製造・販売する、「せんぱいの店」として、地域の活性化への取り組みが何倍にも拡大されつつあります。

食をテーマにした学校と地域住民協働の街おこしには、様々な好条件が重なったことはいうまでもありませんが、つきつめると、優秀な調理専門教師とアイデア一杯の多気町企画調整課岸川さんという人材に恵まれた事につきると思います。

村林先生の「一流の板前、飲食店経営者を育てる」という熱く強い意志。町職員として、高齢化した農村で地域独自の街おこしをやりたい。という岸川さんの強い意志が、重なって、行政を動かし、県教育委員会を動かし、町民を動かし、地域が活性化されました。

多気町企画調整課の岸川さんは「まちづくりのためには、新しく何かを作ろうという発想ではなく、知恵を出して今あるものにもう一度光を当てることが大事。地域に根を張れば、地域は元気になる」と語っておられました。

本区においても、文化を中心として地域の様々な観光文化資源をもとに地域の活性化に繋げる試みは、昨年の文化庁長官表彰につながったことは大きな成功例として全国から注目を浴びております。また、地域ブランド創設事業についても、それぞれの地域特性を活かしながら官・民協働し着々と効果をあげつつあり、私どもも大いに評価するところであります。

そこで本区の地域興しの取り組みとして、各地域の有形無形の財産を発掘する試みについて、成功例と今後の方向性についてのお考えを伺います。更に、多気町の例であきらかなように、職員の知恵、アイデアが大きく街活性化に貢献しました。本区2千数百名の職員のアイデア、知恵を引き出す環境つくりについて、今後どう取り組まれていくのか伺います。また、東京都の「地域の底力再生事業」など補助金の効率的な活用も大いに期待されるところであります。国、東京都などの補助金も視野にいれた、地域おこしについてのお考えもお聞かせ下さい。
以上で私の質問全部を終わります。ご清聴ありがとうございました。

平成21年 第1回定例会公明党木下広質問に対する区長答弁
(2009年 2月24日)

区長(高野之夫
ただいまの木下広議員のご質問に対しましてお答え申し上げます。
まず、不況経済対策と平成21年度予算案についてのご質問のうち、世界的な景気後退の影響による、地域経済、区民の生活実態に対する私の認識についてのご質問にお答えいたします。今回の世界規模の不況は、金融から実体経済へと影響が本格化する中、区民生活や区内中小企業にも大変厳しい影響が急速に広がっているものと認識しております。昨年12月の都内中小企業の景況は、バブル経済崩壊後の平成10年9月以来の低水準となり、採算状況、資金繰りに対する先行きへの不安が強まっております。区の中小商工業融資における小企業資金貸付も、昨年12月から利子補給率を2%に引き上げたこともあり、貸付件数が昨年の7倍以上となっております。暮らしの面でも、若年から高齢まで、雇用不安が広がりつつあり、加えて不況が家計を圧迫し、消費も控えざるを得ない状況にあるのではないかと思っております。また、平成20年度における生活保護受給世帯数は、1月末時点で既に9.6%の増加となっていますが、平成19年度の5.7%と比べ、約2倍の増加率であります。こうした状況に対応すべく、区としても平成21年度予算案において、31項目にわたる生活支援策を予算化いたしましたが、不況に直面する区民が新たな一歩を踏み出すためにも、一日も早く国レベルでの実効性ある経済対策が実施されることを望んでいるわけであります。

次に、定額給付金についてのご質問にお答えいたします。
まず、今後のスケジュールでございますが、ただいま4月12日に定額給付金の申請書が送付できるよう準備に取り組んでおります。総額37億5,000万円の給付金の支給をお待ちになっている区民の方々の期待に応えるためにも、今後、迅速に対応をしてまいります。

次に、地域経済活性化につなげる決意についてであります。本区では、定額給付金が地域経済活性化に有効かつ効果的に活用されるために、区内共通商品券の発行を豊島区商店街連合会と行うことにしております。区内ではこれまでも、平成11年からプレミア付商品券を発行しておりますが、商店街や消費者の方々にも大変好評でありましたので、プレミア率をいくらにするかなど、いくつかの課題は残っておりますが、現在、話し合いを進めておりまして、内容がまとまり次第、広報としま等で区民の皆さんへの周知に努めてまいります。区といたしましては、定額給付金の支給開始時期に合わせ、この商品券が発行されることにより、地域経済の活性化に向け大変大きな経済効果が生じるものと期待しております。また、そのための努力をより一層していかなければと考えております。

次に、子育て応援特別手当についてのご質問にお答えいたします。
子育て応援特別手当は、ご指摘のとおり対象者が限定されていることから、定額給付金に比べて新聞等に取り上げられることも少なく、周知が不足しているところは承知をしております。したがって、区といたしましては、該当世帯すべてに案内書類等を送付することとし、これに加え、ホームページ、広報としまへの掲載、保育園・幼稚園でのポスター掲示などにより、受給資格を持つ区民が漏れなく申請できるよう、制度、手続きの周知徹底に努めてまいります。

次に、本区の中小企業支援策の今までの成果と今後の取組みについてのご質問にお答えいたします。
ご指摘のとおり、昨年後半からは、これまでに経験したことのない規模で世界経済が大きく揺れ動きました。その影響は我が国にも広く及んでおり、特に日本の産業を下支えしている中小零細企業は、その影響を一番大きく受け、受注の減少、収益の大幅な減少など、極めて厳しい経済状況下にあります。とりわけ本区の産業構造は、中小企業が多くを占めておりまして、私自身もあらゆる場面でその厳しい状況を直接お聞きする都度、経営状況の悪化に苦しんでおられる経営者の心情に心を痛めております。本区では、昨年10月から公衆浴場経営改善費助成の拡充、そして12月からは中小商工業融資の拡大や中小企業相談体制の強化など、様々な中小企業支援策として実施してきたところでございます。また今月27日からは、さらに対象業種を拡大するセーフティネット保証の認定件数は、昨年11月から本年1月までの3カ月で2,000件を超えて、融資も含めた経営全般についての相談や問い合わせも、3カ月で5,000件を超えるような状況となっております。一方、本区独自の小企業資金の2.0%利子補給や信用保証料補助率の50%拡大などにより、区中小商工業融資は1カ月で100件を超すお申込みをいただいており、昨年と比べ10倍近く拡大しているなど、きめ細かい対応が大きく成果として表れております。さらに、相談や申請受付体制の充実を図ったことにより、例えばセーフティネットの認定申請や融資申込みに対しては、原則として翌日には回答できるようにしているため、中小企業の皆さんや金融機関から大変よい評価をいただいているところでございます。私も、地域信用金庫の窓口にお伺いして、状況の把握にも努めました。また2月12日の信金協議会懇親会にも出席して、各支店長との意見交換もしております。また、第2回としまものづくりメッセにおいては、会場内に融資も含めたビジネス相談窓口を開設するほか、企業向けセミナーを開催することにより、区内企業のPRにとどまらない総合的な経営支援も図ってまいります。いずれにいたしましても、中小企業を取り巻く状況は今後も厳しさが続くと考えておりまして、ご評価いただいておりますこれまでの施策にさらに改善を加え、中小企業や商店街を支援していくとともに、引き続き国や東京都の緊急経済対策を注視し、また連携をも図りながら、積極的に取組みを進めていきたいと考えております。

次に、予算編成の特徴と事業展開についての基本的考え及び行財政改革への取組みについてのご質問にお答えいたします。
21年度予算は、41億円の財源不足を埋めるため、特別な手立てを4年ぶりに講じるとともに、一部施設の建設や大規模改修工事については、その着手を1、2年先送りいたしました。こうした状況下ではありましたが、特に福祉においてはこれまでの行革で削減した事業を復活するとともに、雇用機会の創出等を盛り込んだ生活支援策経費を計上するなど、区民需要にきめ細かい配慮をいたしました。一方、文化施策や都市再生、環境などの部門には重点的に予算付けを行い、本区の未来展望の方向性を明確に示すことにも心がけております。現在、100年に1度の不況と言われる危機的な状況ではありますが、危機に直面して萎縮し、守りに徹するだけでは、将来への飛躍の芽を育てることはできません。危機を改革と成長のエネルギーに変え、これまで進めてきた改革の方向を再確認する中で、地域の総力を結集し、文化と品格を誇れる価値あるまちづくりに向けた事業展開に全力を傾けてまいる所存でございます。また、21年度予算案におきましても、民間活力の活用に取り組み、保育園2園の民営化と1園の委託化により1億5,000万円、そのほか自転車等駐車場4カ所に指定管理者の導入や、学校用務業務の委託化によっても財政効果を生み出し、当初予算に反映させたところであります。さらに、定員管理計画に基づく職員の削減についても85人を見込んでおり、持続可能な財政運営を確保していくためには、21年度も引き続き構造改革に取り組んでいかねばならないと考えております。

次に、高齢者や障害者、女性、子どもに対するセーフティネットについてのご質問にお答えいたします。先程来、急激な景気悪化は、高齢者、障害者、女性、子どもなど、社会的弱者を直撃しており、セーフティネットの整備は大変重要な課題であると認識しております。社会的弱者に対するセーフティネットは、最終的には生活保護でございますが、その前段となるセーフティネットとして、各分野で様々な施策を実施いたします。まず、高齢者関係の施策についてですが、4月から介護保険料を大幅に引き下げ、被保険者の負担軽減を図ることといたしました。また、民間の賃貸住宅に居住している高齢者世帯等を対象として、転居後の家賃助成を行う高齢者世帯等住み替え家賃助成事業の助成期間を3年から5年に延長いたしました。

次に、障害者施策につきましては、施設入浴サービス事業の利用負担額を、現在1回当たり200円のところをすべて無料化するなど、地域生活支援事業の利用者負担の軽減措置を充実するとともに、福祉タクシー券も増額いたします。また、女性、子ども施策につきましては、4月から妊婦健康診断事業の超音波検査受診票の年齢制限を撤廃するほか、子育てファミリー世帯が住み慣れた地域で居住の安定が図れるよう、子育てファミリー世帯への家賃助成事業を新たに実施いたします。

次に、今後の財政運営と重要施策についてのご質問のうち、従来の財政健全化方針と今後の取組みについてのご質問にお答えいたします。
平成13年度から16年度までの財政健全化計画においては、歳出抑制の達成率が低く、結果的に計画期間内に黒字に転換させることができませんでした。一方、16年度に策定した行財政改革プラン2004、その後に続く2005では、職員定数の削減、事務事業の休廃止や見直し、業務・施設の委託化や民営化など、様々な構造改革に積極果敢に取り組んだ結果、もちろん歳入環境の好転という追い風もありましたが、18年度当初予算では、財源対策を講じることのない堅実な予算編成を行えるまでに改善が図られたのであります。したがいまして、危機的な財政状況の健全化に取り組み、一定の成果を上げた過去の教訓を踏まえて、今後も基本的に構造改革路線を堅持してまいります。具体的にはこれまで同様、負債については繰上償還に努め、一方、将来への備えとして、財政調整基金等の充実に努めてまいります。加えて、例えば投資的経費へのシーリング枠の導入や、行政評価と連動させた事務事業の休止制の創設など、身の丈に合致した財政運営につながるシステムの構築について、具体策を検討してまいりたいと考えております。

次に、区民への財政運営、財政判断に関する情報提供についてのご質問にお答えいたします。区の財政状況につきましては、条例の定めるところに基づき、毎年6月と12月の2回、当該年度の予算概要や前年度決算のあらましなどを公表しております。また、その他随時、区政の透明性を高め財政への区民参加を促すため、財政白書や、グラフで見る区の財政状況等、印刷物の発行、区政連絡会における説明やホームページの活用などにより、可能な限り区民に対する詳細な情報提供に努めております。ご指摘のとおり、今後ますます区政の透明性や説明責任が問われると思われます。一層、リアルタイムでの提供を心がけることはもとより、一方的な情報提供にとどまることなく、双方向のコミュニケーションが確立するよう、特に予算編成の直接の担当となる部局で、区民から発信されたメッセージを吸い上げられるシステムの構築を目指します。また、こうした区民の声を予算に反映させる職員の政策形成能力のスキルアップにも取り組んでいかなければならないと考えております。

次に、現下の経済情勢を鑑みた、新庁舎建設の問題についてのご質問にお答えいたします。
この度の新庁舎計画の最初で最大のポイントは、南池袋二丁目A地区における再開発事業が成立するかという点であります。ご指摘のとおり、再開発事業は経済情勢に大きく影響を受ける事業でありまして、今回の経済の大変動は、再開発事業の計画を構成する重要な要因にも変化をもたらしています。マイナス要因としては、マンション価格の下落であり、逆にプラス要因は建設費の下落であります。事業計画は、これらの要因のバランスの中で見通しをつけるものであります。現在、再開発準備組合では、マンション部分の保留床をまとめて取得する住宅デベロッパー等の参加組合員を早期に担保する仕組みを考えており、参加組合員の選定のための事業者ヒアリングを始めております。今年の秋頃には再開発組合を設立し、その定款に参加組合員を定めますので、その時点では事業の見通しがはっきりするものと考えています。また、現庁舎跡地の資産活用についてでありますが、こちらの資産価値につきましても、経済情勢によって変動することは十分認識しています。経済状況等による資産活用額の低下があったとしても、定期借地の地代の一括受取期間を変更することで、十分に対応が可能であると考えております。
この度の新庁舎建設の大原則は、構想段階の当初より申し上げておりますが、税収等の一般財源の投入や、起債などの借金をせずに新庁舎を実現するものでございます。経済状況に即した事業スキームの変更は、今後、時点時点でその度ごとに必要と考えていますが、この大原則の範囲で十分事業が組み立てられるものと考えております。また、今後、参加組合員がいつまで経っても目途が立たないなど、再開発事業自体の組立てが不可能な見通しとなった場合におきましては、止まる勇気もやめる勇気も持っております。しかしながら、これまで申し上げましたように、現時点では計画の実現に向け、関係者が協力して、一歩一歩着実に取り組んでおりますので、そのようなことにならないものと考えております。以前から申し上げておりますように、新庁舎建設は、この建設だけで終わりではありません。池袋副都心の全体構想、展望が見えることによって、この地の価値が生まれ、注目されることであります。文化都市として生まれ変わる大きなポイントとなるのが新庁舎建設と庁舎跡地開発ではないかと位置付けております。

次に、各地域の有形無形の財産を発掘する試みについてのご質問にお答えいたします。
先週、私は、新潟市で開催された「日仏都市・文化対話」に参加する機会を得て、フランスのナントを始め、新潟、金沢、高松、仙台、横浜など、各都市の文化政策に関わるトップの方々と、地域再生と文化の関係について、2日間にわたり意見交換をしてまいりました。今年から新潟市が新たに展開する「水と土の芸術祭」、歴史と伝統を大切にしつつも、新たなチャレンジとして成功を収めた「金沢21世紀美術館」、高松市による「瀬戸内国際芸術祭」、開港150周年記念事業に取り組む横浜市など、文化の力で地域再生を成し遂げようとする各都市の報告を聞き、地域振興と文化政策はまさに軌を一にするものであるとの思いを強くいたしました。ただいま、木下議員から、三重県の多気町における地域おこしの事例を詳細にご紹介いただきましたが、まごの店を中心とした人間関係の広がりこそが、地域活性化の原点であり、これぞ文化の力であると、強い共感を覚えました。文化は、一部のアーティストによる創作活動に限られるものではなく、地域固有の資源と、郷土を愛する人々の思いが融合する中から生まれるものであります。単に観光客を呼び込むことを目的とした芸術祭やイベントを行うだけでは決して持続的な展開につながらないのはそのためであります。多くの区民が地域の有形無形の資源を郷土の誇りであると感じ、自ら楽しんで活動することで、初めて地域おこしのプロジェクトに命が吹き込まれ、人々の新たな関係を生み出しながら、活力を創造するエンジンが回り始めるのであります。また、こうした文化を機軸としたまちづくりの展開は、必然的に組織の縦割りを越えた、総合的な対応を行政に求めると同時に、新たな連携・協働を促進する効果も持っております。この度の文化芸術創造都市に関する文化庁長官表彰を契機として、それぞれの地域の個性あるブランドが響き合う姿を目指し、まさに文化創造都市づくり・新展開とも言うべき、地域活性化に向けたまちづくりを、区民の皆さんとともに、自信を持って推し進めていきたいと考えております。

次に、区職員のアイデア、知恵を引き出す環境づくりについてのご質問にお答えいたします。区職員は、行政のプロとして、それぞれ様々な能力を身に付けております。地域を愛する区民の活動と、行政のプロとしての職員のアイデア、知恵が融合すれば、地域の活性化が飛躍的に前進することは、ご紹介いただいた多気町の成功例からも明らかでございます。区では、これまで様々な事業実施の過程で、区民の皆様とアイデアや知恵を出し合い、協働して地域の活性化を進めてまいりましたが、さらなる前進を目指して、今後は地域の各分野の最先端で活躍されている区民の皆様と職員との勉強会を立ち上げ、少し時間をかけて、ともに地域の問題を研究する機会を設けたいと考えております。

次に、国、東京都などの補助金を視野に入れた地域おこしについてのご質問にお答えいたします。地域おこしやまちづくりは、本来、それぞれの県や市町村が独自の発意に基づいて展開すべきものだと思いますが、国や東京都などによる支援策を有効に活用することで、これまでの殻を破り、産学官が連携した新たな展開の契機としていくことも、また重要なことでもあります。また、国の構造改革特区や、ふるさと財団、財団法人地域創造など、全国レベルでの財団も、民間部門を含めた様々な支援活動を展開しております。都の、地域の底力再生事業補助金についても、今年度、巣鴨五丁目大親町会サマースクールや、池袋ふれあい交流街づくり事業で活用し、地域の活性化に取り組んだところであります。こうした支援策を活用することは、資金面だけではなく、経験豊かな専門家によるソフト面からの支援や、情報提供、人材育成、都市間交流など、幅広い効果が期待できるものであります。また、国レベルの支援策に手を挙げることで、郷土の取組みが先進事例として全国に紹介されるような機会をつくることも地域振興の大切なPR戦略でもあります。
ご紹介いただきました、まごの店も、国土交通省の手づくり郷土賞に選ばれ、全国に紹介されていますが、こうした国からの認定を受けることは、関係者の士気を高める上でも大きな効果が期待できるものと考えております。今後とも、こうした支援策を最大限に活用することで、行政、住民、そして産業が一体となって、豊島区独自の文化による地域振興の姿を実現し、全国に発信してまいります。
なお、私からの答弁は以上でございますが、その他の質問につきましては、関係部長から答弁させます。
〔齋藤賢司清掃環境部長登壇〕

清掃環境部長(齋藤賢司)
環境分野を軸とした、緑の社会への構造改革、低炭素社会

今後の財政運営と重要施策についてのご質問のうち、まず環境分野を軸とした、緑の社会への構造改革、低炭素社会についてのご質問にお答え申し上げます。環境・エネルギーを景気対策の柱と位置付けるグリーン・ニューディールが世界の潮流となっていることは、ご指摘のとおりと認識しております。未曾有の経済危機に見舞われている今、これまでのエネルギーを大量に消費する社会構造、産業構造を変革し、新たな環境ビジネスモデルを立ち上げ、雇用の創出を図ることが求められております。これまでの経済と環境を対立した構図で捉えるのではなく、経済活動に環境という視点を内在させることによりまして、エネルギー利用の変革、事業活動の変革、生活の変革等をもたらし、将来世代が安心して暮らせる持続可能な環境都市、即ち低炭素地域社会をつくり上げることができるものと認識しております。

次に、環境をベースにした経済活性化と雇用創出に向けての取組みについてのご質問にお答え申し上げます。区では、策定予定の豊島区環境基本計画におきまして、CO2削減対策の方向性を示しており、それに基づいて具体的な施策を展開してまいります。国や地方自治体で行ういずれの環境施策も、経済活動と深いつながりを持っておりますので、低炭素地域社会の実現を積極的に目指すことが、経済活性化及び雇用創出につながっていくものと考えております。豊島区の取組みとして、来年度、太陽光発電の導入についての補助件数を今年度より大幅に拡大します。国や東京都の補助事業と連携する形で、ワンストップ窓口の設置などを図り、太陽エネルギー機器の爆発的な普及拡大を目指してまいりますので、大きな経済効果が期待できるものと考えております。また、東京都が平成22年度から我が国で初めて開始するCO2排出量取引制度は、CO2に価格がつけられ、市場で取引される制度でございます。まさに環境と経済が結び付いた仕組みであります。本区におきましても、中小事業者等がこの取引制度を活用できるようなスキームづくりに取り組んでまいります。環境をベースとした経済活性化のためには、消費者である個々の区民が環境配慮型の商品を選択し、そのことによりましてメーカーなどの行動を環境型へ変えていくことも重要であります。そのため、区民、事業者等に向けて、カーボンフットプリントなどに関するきめ細やかで正確な情報提供を行い、CO2の見える化を推進するとともに、一事業者としての豊島区も、公共施設への再生可能エネルギーや緑化などの導入など、経済波及効果を踏まえて、環境配慮率先行動を進めてまいります。
私からの答弁は以上でございます。
〔渡邉文雄区民部長登壇〕
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区民部長(渡邉文雄)
地域マネジメント推進についてのご質問のうち、まず、自治基本条例制定から今日までの自治推進の認識及び課題についてのご質問にお答えいたします。
自治の推進に関する基本条例は、区民との参加と協働の基本ルールを定めたものでありますが、特に地域における住民の主体的な取組みを自治の起点とすることを基本理念に掲げています。この理念を広く共有し、区民一人一人がまちづくりの担い手として主体的に地域社会と関わることが、魅力ある地域社会を築いていくことにつながるものと考えます。しかしながら、豊島区では、とりわけ人口流動が激しく、また近年は、特にマンション建設による人口増加に伴い、地域の中の人と人とのつながりが希薄化しており、都市社会における自治のあり方が改めて問われているといえます。こうした現状を認識し、都市社会に暮らす人々のライフスタイルにマッチした、新たな参加の仕組みを築いていくことが大きな課題であると認識しております。そうした仕組みづくりに向け、自治推進委員会の答申を踏まえ、地域協議会モデル事業を来年度から実施してまいりたいと考えておりますが、これまでの枠組みにとらわれない組織づくりに挑戦し、地域自治の機運を盛り上げてまいりたいと存じます。

次に、区民ひろばの成果と今後の課題についてのご質問にお答えいたします。区民ひろばは平成18年度から22地区での実施を目標にスタートし、現在は18地区で開設しております。成果といたしましては、区民ひろばが地域のコミュニティ施設として整備されたことが第一に挙げられます。従前のことぶきの家、児童館といった特定目的の施設から、地域のコミュニティ施設として再編されたことにより、いろいろな世代の方の利用が可能となり、地域活動の拠点施設として地域コミュニティの発展に寄与しております。成果の第2としては、施設の自主運営、自主管理を目的とする運営協議会が14の地区で設立され、多様な取組みを行っていることが挙げられます。運営協議会は、これまでの町会等の既存組織の枠にとらわれず、様々な団体、個人が参加し、区民ひろばまつりを始めとする各種イベント等の企画・実施に取り組んでいます。こうした活動を通して、新たな地域コミュニティが創造されつつあると感じているところでございます。今後の課題といたしましては、第1に、残り4地区での展開が挙げられますが、子どもスキップの実施状況や、学校施設の改築に合わせ、条件が整い次第、着実に実施していきたいと考えております。課題の第2としては、運営協議会について、組織力強化のため、新たな人材を発掘すること、施設の自主運営の取組みを推進していくことが挙げられます。しかし、現在の運営協議会の力強い活動を拝見いたしますと、会員の皆様方の熱意と努力により、自ずと解決できるものと確信しております。地域区民ひろばはスタートして3年が経過しようとしておりますが、今後も地域住民のふれあいを深め、地域の力を回復することにより、地域福祉の推進や地域の課題発見、課題解決までを実現できるよう努めてまいります。

次に、区民ひろばと地域協議会の役割分担についてのご質問にお答えいたします。区民ひろばは、小学校区を単位に、住民同士のつながり、身近な地域課題の解決力を高めることを目的とするものであり、参加・協働の豊かな土壌を耕す仕組みと言えます。一方、地域協議会は、おおよそ中学校区程度を単位に、町会を核とする幅広い地域活動組織が結集し、参加と協働の視点に立ってまちづくりの課題をトータルに考え、区に施策提言を行うことを目的とする組織でございます。コミュニティの参加と、地域からのまちづくり提案へという2つの区民参加の仕組みが連動することにより、地域起点の自治がより一層推進していくものと考えます。

次に、自治推進の人材育成についてのご質問にお答えいたします。近年、地域活動への関心・参加の低下が懸念されておりますが、一昨年に実施した協働のまちづくりに関する区民意識調査によれば、約3割が、参加の機会があれば参加したいという意欲を示しています。この潜在意欲のある3割をどう掘り起こしていくかが大きな課題であり、モデル事業では、無作為抽出による参加の呼びかけという新たな手法による地域eモニターを活用し、地域への関心を高めてまいりたいと考えています。また、区内6大学との協働事業であるとしまコミュニティ大学においても、地域の担い手育成のための新たなプログラムとして、区の重点政策をテーマとするとしま学講座を、来年度より展開してまいります。
以上をもちまして、木下広議員のご質問に対する答弁を終わります。