私は、公明党区議団を代表いたしまして、第37号議案すなわち、平成18年度豊島区一般会計予算案に賛成する立場から討論を行います。 尚、関連しまして先ほど上程されました、第31号議案「豊島区子どもの権利に関する条例」に賛成の立場で討論を行います。
さて、平成18年度予算案審議に当たって私ども公明党は、国の三位一体改革や都区制度改革の流れの中で、景気は一部回復の傾向が見られつつも、区民生活の先行きには、いまだ不透明感が見られ中での予算審査であることから、行政の果たすべき役割を踏まえ、1.区民の目線に立った行政運営となっているか。2.時代の変化に適応した事業展開となっているか。3.事業の改善、見直しなど行政の質の向上に取り組んでいるか。4.我が党の予算要望に応えられているかなどを主眼に、慎重かつ厳正に審査に臨みました。

 

まず予算案に対する概略の意見を申し上げます。平成18年度予算案について高野区長は、土地売却、基金の運用、財政調整基金の取り崩し、繰越金の計上、減税補填債の発行など、いわゆる「財源対策」といわれる措置をまったく講じていない「堅実な予算」と述べられました。予算規模をみても一般会計は861億32百万円で、対前年度比3億44百万円の減、0.4パーセントのマイナスとなり、8年連続のマイナスとなる「緊縮型の予算」となっております。緩やかな景気回復傾向を受け、市町村民税の法人分の伸びにより財政調整交付金の増加、また、税制改正による特別区民税の増収など歳入増加要因がある中、区民需要の圧力にこらえ、「堅実な予算」を組んだことは、区長の改革に対する強い思いを感じました。しかし国の税制改正等で区民は国税のみならず、それに伴って住民税がアップし、社会保険料、国保年金、介護保険、お子さんのいるところでは,保育料等、いろいろなところにしわ寄せがきています。ぜひ豊島区として区民生活の影響がどの程度なのかを調査し、影響が大きいところは対策を講じていただきたいと要望いたします。

区民は、豊島区の区財政が非常に厳しいということは十二分に分かっており、区財政が健全な姿に戻る時を待ち望み、必死にご協力いただいてきております。その期待に応える意味からも、私どもは、徹底した内部努力を主張して参りました。特に構成比の高い人件費を抑制することは最第一の課題だと考えます。更に、民間でできることは民間に移行し、今後はそれぞれの事業を事業仕分けし、市場化テストを活用して、官から民への流れを加速させていただきたいと、改めて要望いたします。区長は、定員管理計画に基づき平成22年に職員2000名達成すると発表されましたが、区民の立場からの取り組みを大いに評価するところでありますが、従来の区民サービスの低下を招かないよう、細かく目配りを忘れずに取り組んでいくことを期待します。いずれにしても、財政の健全化には「入りを図りて、出るを制す」とのことわざ通り、一層の効率的な区政運営を望む私どもの立場からしますと、本予算案の方向性とそれに向かう方法について、概ね理解するところであります。

 

次に、本予算案に計上しております「子どもの権利推進事業経費」 828千円について、第31号議案の「子どもの権利に関する条例」に賛成の立場での私ども、公明党の意見を申し述べたいと思います。

私ども公明党は、少子高齢社会が社会の持続的成長にとって大きな問題となっていることに加え、子どもの権利侵害、いわゆる「いじめ」や「虐待」などが依然として存在し、放置することの出来ない大きな社会問題、誠に憂慮すべき事態となっていることに心を痛め、「子どもの権利条例」については、党の最重要課題の一つとして取り組んでまいりました。

皆さん既にご案内のとおり、本豊島区議会は、1989年、平成元年11月に「児童の権利に関する条約」が国連で採択された翌年の7月に、さっそく国に対し「児童の権利に関する条約」の早期批准を求める意見書を、全会派一致で採択し、意見書を提出しております。また、平成5年11月にも同様の意見書をこれも全会派一致で提出いたしております。そして、国は、翌・平成6年4月に「児童の権利に関する条約」に批准いたしました。国連加盟国では158番目であります。

豊島区は、これまでも地域団体や関係機関などとの連携のもと、子どもの視点に立った子ども施策を、23区をリードする形で推進してきた事に私どもは大いに評価いたしております。しかしながら、急速な社会の変化は、子ども達を取り巻く環境にも大きな影響をもたらし、深刻ないじめや児童虐待等の実態があり、生存・発達といった基本的権利が侵害され、子どもの健全な成長や人格形成に大きな影響を及ぼしていることが危惧されました。そこで、「子ども」の「権利」を尊重し、社会全体で子どもの成長を支援していくということが当面の最重要課題とされ、平成11年6月、第22期豊島区青少年問題協議会に「青少年の社会参画の推進方策について」を諮問し、その答申を受け、さらに、次の23期青少年問題協議会に「権利の主体としての青少年の成長を支援する方策について」を諮問、そして平成15年2月に「子どもの権利条例」の制定が緊急かつ、重要課題である旨の答申を受けたのであります。

高野区長は、この答申を真摯に受け止め、答申にそって着実に進めてきました。すなわち、厳粛なる区議会において全会派一致で2度も意見書を上げてきたこと、更に、各会派からも委員が出ている「豊島区青少年問題協議会」の答申でも、全員一致で決定され答申された結果を受けて「子ども権利条例策定」に取り組まれてきたものであり、正常な手続きを踏んで提案されてきた同条例策定過程に、何等、瑕疵は認められないというのが私どもの立場であります。

先ほども申し上げましたが、今、子どもたちの置かれている状況は、ほんとうに憂慮すべき状況にあると思います。子どもは、家庭の宝、地域の宝、そして社会の宝であります。その宝である子どもたちが、いま苦しんでいる、悩んでいる現実をこのまま放置するわけにはいきません。今まで、多くの官・民の関係者が、それぞれのお立場で一生懸命、健全育成に取り組んでおられますが、残念ながら、状況は未だに改善にいたっておりません。逆に、「いじめ」や「虐待」など、いわゆる「子どもの権利侵害」の実態はさらに深刻になっているのであります。以下、本予算委員会の審議過程の議論の中で、気になった点を何点かに亘って指摘し、「子どもの権利に関する条例」の早期策定の立場にたった私どもの主張を述べさせていただきます。

 

第1点目、「家庭も地域もしっかり取り組んでいるのに、なぜ、権利の履き違えを起こさせるような条例を、行政が制定するのか?」という話がありました。

私どもは、その履き違えの危険、リスクを避けるために、条例を作らないのではなく、作ることのほうが意義、メリットがはるかに大きいと考えております。指摘されたような、権利の履き違えは極力避けなければなりませんので、子どもたちも勿論のこと、大人たちも履き違えないよう、この条例の趣旨の普及・啓発には全力で取り組んでいただくよう、関係者に強く要望しておきます。

第2点目は、「子どもの権利に関する条例」が憲法に違反しているかのようなご発言がありました。そのようなことがあってはならないし、あるわけがないと考えます。日本が条約を批准したということは、その内容が憲法に照らして違反していないというなによりの証であります。「条約」は「憲法」と「法律」の中間に位置していることから、このことは、誰の目にも明白であります。更に、批准するにあたって日本国政府は、「権利条約は、子どもの権利の尊重及び保護の促進を目的とするもので、基本的人権の尊重を柱とした我が国の憲法と軌を一にする」と見解を述べているのであります。豊島区の条例案で表明している子どもの権利の内容は、この権利条約にある子どもの権利を、子どもも大人も、改めてもう一度確認しあうための内容が書かれているのであり、条約を逸脱していない、つまり憲法には違反していないのであります。子どもは、保護の客体であり、かつ権利の主体ということであります。

第3点目は、「人権教育と道徳教育」の関係です。「権利追及の人権教育を導入して、180度違う道徳とどのように整合性をとるのか?」という話です。教育委員会の優秀な理事者からは、語気を強め「人間の生命を尊重することは一番大事な人権教育で、これは道徳教育の大切な中身である」と明確に答弁されました。全く、そのとおりだと思います。「子ども権利条例」が制定されたからといって、これまでの人権教育、道徳教育に影響があっていいはずはありません。道徳とは人のふみ行うべき道、であります。人権教育とは、人間が人間として人間らしく生きるための、その営みであります。正に「人権教育は、道徳教育の基本」をなすものであると考えます。

第4点目は、平成13年2月15日の都議会厚生委員会での議論について、結果として「継続審査」になったのは、各会派とも子どもの権利には慎重な立場であったのでは?という内容です。

これは明らかに間違った認識です。少なくとも、私ども公明党は平成10年9月の都議会の本会議で、子ども権利条例制定を求める立場からイの一番に質問し、また平成13年の子どもを権利条例の制定を求める請願の審議に際しても、立場は一貫して変わらず、制定に向け強く都側に主張いたしました。その審議での公明党石井義修議員の発言を引用します、「社会参加権がどうとか、権利に対する義務がどうとか、あまりへ理屈を言わないで、中身の問題として、そうした様々な子どもの虐待、登校拒否、いじめ等を解決するための、その根拠法令としての条例を造っていただきたいという事だと私たちは解釈して、やっぱり早急に条件整備進めるべきだということを表明します。」と述べています。私ども公明党は国、都、区は一貫して人権を守る立場を貫いており、権利条例の早期制定を主張してきたことは誰が聞いても、誰が見ても明白であります。

第5点目、都議会で継続審査になってあれほど大議論になっていたものを、なぜ本区の青少年問題協議会に情報提供しなかったのか、という話しについてです。そもそも議論になったのは、平成12年度までに権利条例を制定すると青島知事が明確に答弁しておきながら、年度末になっても提案されない、なぜかということだったと思います。知事がかわって方向転換がありうる旨の苦肉の答弁をせざるを得ない状況の議論であり、そのようなことを豊島区の青少年問題協議会に報告する必要は全くないと考えます。それぞれ独立した自治体であり、独立した豊島区らしく、「子どもの権利擁護」にむけた答申が出されたことは大いに評価するところであります。

 

第6点目、親殺しの犯罪者が「子どもは親を殺す権利がある」といったことを例にして、同条例が通ると、このような履き違いが起こるという議論がありました。こんな事は履き違いにもあたらず、人権感覚がそもそも違うのではないかと考えます。逆に履き違いの人権がまかり通る社会のほうが恐ろしいのであり、傷口が深くならないうちに条例を制定し、人権のもっとも根幹をなす「生命の尊さを」訴え、子どもたちが家庭の宝、地域の宝、社会の宝として、さらに安全に育まれる環境をつくるため、私どもは全力で取り組んでいく決意でございます。

ここで区長に一言申し上げます。私ども公明党は、本予算案の成立のため、あらゆる努力を重ねてまいりましたことは区長ご案内の通りでございます。特に、予算委員会の第9日め全部の補足質疑をむかえるにあたっては、わざわざ池内副議長を発言席に移動させ、発言していただき、予算案全体の成立に向け涙ぐましい努力をしてまいりました。が、その補足質疑の区長答弁で、自民党委員の質問に「廃止も含めて検討する」という発言を耳にしたときは、公明党7人全員が正直、驚愕しました。

組織は「長の一念、トップの腹一つ」で決まります。建設は死闘、破壊は一瞬という言葉もあります。今後とも、25万人区民のトップとして、責任あるリーダーシップをとっていただきますよう強く望むものであります。以上箇条書きに、私どもの考えを述べさせていただきましたが、「子どもの権利に関する条例」に対する区の取り組み、ご判断は、極めて常識的であり、時宜を得たものと大いに評価するものであり、当然のことながら、「子どもの権利推進事業経費」828千円の予算計上は誠に、正しい判断であったと名言させていただき、「子ども権利条例」に関する意見を終わります。

 

最後に予算案に対する結論を簡単に述べさせていただきます。

平成18年度の予算案は、第二次財政健全化への2年次目となるものであります。高野区長は就任以来、豊島区の財政再建を第一の優先課題として取り組まれ、その努力が成果として少なからず現れてきたことは、大いに評価するところであります。将来的にも十分に区民需要にこたえられる、ゆるぎない財政基盤を整えるための、昨年度からスタートした行革プランについては更なる説明責任を果たされることを強く要望致します。一度拡大した事業を廃止、休止にするためには、大変なエネルギーがいることは区長ご存知の通りです。私ども公明党は、これまでも徹底した行財政改革を訴え、職員の定数削減を始め。事務事業の見直しや民間委託等、あらゆる角度から提案をしてまいりました。いよいよ基本計画が制定される段となり、痛みに耐えてきてくださった区民に、基本計画に沿った区の将来像を、区民にしっかりと示していただきたいと思います。そして、いつも言っていることですが、高野区長の改革に立ち向かうゆるぎない信念が、全ての職員に共有して各現場で、区民に見せることができれば、区民は改革への理解を一層示していただくことは間違いありません。区民との協働の姿勢を更に貫いて戴くことを大いに期待しまして、本予算案に賛成する公明党の討論を終わらせていただきます。ご清聴、誠にありがとうございました。