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平成19年 第3回定例会中島義春一般質問

2007年 9月26日

     「安全、安心のまち新たな“としま”を目指して」

私は、公明党豊島区議団を代表して一般質問をいたします。
平成11年初当選後、区の厳しい財政状況を私は知り、まずは財政の健全化をしなければ豊島の未来はない、このような思いで、この8年間、財政改革を成し遂げるために、私は、区民の皆様に理解と協力を求めてきました。4月の区議選で、この改革への努力が、区民の皆様の協力の下、健全化の光が見えてきた、私は、これから新たな豊島を築くためにと訴えさせていただき、支持者の力強い支援によって当選させていただきました。今後は、今まで以上に、区民の皆様のご期待に応えるべく、しっかりやってまいります。
それでは、質問に入ります。

平成18年度決算について
初めに、平成18年度決算についてお伺いいたします。
今回の決算を見ますと、平成16年度、17年度決算に続き、平成18年度決算においても、実質単年度収支が黒字となり、3年連続で実質単年度収支が黒字となりました。区長の決算に対する評価を見ましても、平成16年度決算では「薄氷を踏むがごとき決算」、17年度決算では「堅実な財政運営に向かっていることが明確に現れた決算」、そして今回の18年度決算に対しては「財政健全化に一つの区切りをつけることができた決算」と、次第に明るさを増し、財政健全化に対する確信が高まるように変化してきております。しかし、黒字が3年続くのは、昭和62年度以来19年ぶりということですから、私たち議員のほとんどは長期にわたる財政の赤字体質の中にあって四苦八苦を続けてきたわけでありまして、健全財政下にある区政を経験したことのない私にとってみては、現在の状況をどう評価してよいか、戸惑いをも感じております。そこで、まず財政健全化について、我が国経済の現状認識を含めまして、歳出・歳入の両面から、今後4年間の財政環境をどのように捉えているのか、区長の認識をお伺いいたします。
何とか危機を脱し、一定の財政健全化を達成したとしても、この先も、持続可能な財政構造の構築に向けた取組みに手を緩めることはできません。未来戦略推進プランでは、その目標として、経常収支比率、人件費比率、公債費比率、財政調整基金積立、借入金償還に関する数値目標を掲げていますが、さらに目標となる指標を増やす必要があると考えています。今年6月に成立した地方公共団体の財政の健全化に関する法律では、すべての自治体に対し、新たに実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率の4つの財政指標の公表を義務付けました。実際には、平成20年度予算の決算からの公表となりますが、こうした指標や、さらにバランスシートに掲載しているストックの状況を示す指標についても、義務付けを待たず、プラン2008の中で、目標値を設定し、区民に示すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
また、今回の決算は、歳入面において景気回復という追い風があるとしても、歳出面において行財政改革プラン2004と2005による構造改革の成果があって初めて達成できたものであると思います。行財政改革というと、歳出抑制だけがイメージされる傾向がありますが、私は、区長が掲げる構造改革には、もう少し広い意味があるように常々感じております。そこで、改めまして、これまで進めてきた区政構造改革の全体像とはどのようなものだったのか、これからの構造改革に臨む姿勢を含めまして、区長のお考えをお聞かせください。
そして、こうした構造改革の成果を踏まえ、区長は、さきの招集あいさつの中で、来年度の予算編成に向けては、重点を絞りつつ、積極的に新たな事業展開を図る姿勢を持って臨みたいと述べておられます。今年3月に策定した未来戦略推進プラン2007では、区政の重点政策として、文化、健康、都市再生、環境を位置付け、戦略プロジェクトという形で、新たな事業展開を明らかにしています。また、選挙戦における区長のマニフェストでは、これら重点政策に加え、基本政策という形で、教育・子育て、福祉・医療、安心・安全、そして参加・協働についても方針を示され、戦略プロジェクトの検討を進めていると聞いております。我が会派では、こうした基本政策における喫緊の課題は、やはり少子化対策、そして高齢者対策であると考えております。本区も、本年度から乳幼児医療費の無料化をさらに進め、積極的に取り組んでいると理解していますが、後期高齢者医療制度など、今後も高齢者の負担が重くなるといわれています。今まで、財政が厳しい中で、長い期間、区民の皆さんに我慢をお願いしてきたわけであり、財政健全化を踏まえ、新たな事業展開の動向を多くの区民が注目しております。そこで、現在検討を進めている戦略プロジェクトとは、来年度予算とどのような関係にあるのか、また、基本政策のうち、特に福祉と子育てについては、どのような内容を柱として検討されているのか、現時点での検討状況をお聞かせください。

部局別枠配分方針による予算編成について
次に、決算に関連して、部局別枠配分方針による予算編成についてお聞きします。この予算編成方式を導入してから、17年度、18年度、19年度と、3回の予算編成を行っています。メリットとして、各部局で主体的に事業展開できるシステムであるという面では評価できるところですが、そもそも、導入1年目、2年目は、財源不足の解消が至上命題である中で導入したものであり、マイナスシーリングのツールとして機能した面もあります。部局の努力がインセンティブとして反映される仕組みについても、現時点では制度化されていない状況です。また、政策を実現するに当たっては、部局を超えて事業展開しなければいけないこともあるのではないかと考えますが、部局別であるがゆえに、かえって縦割りを強化してしまう面もあるのではないでしょうか。財政健全化により新たなステージに立つことができた今、この予算編成方法も、これまでの実施結果を十分検証し、これからは政策を実現するための枠配分予算として見直すべきであると考えています。部局別枠配分方式についての課題認識と見直しの方向性について、お考えを伺います。
また、決算に関連いたしまして、税制改正に伴う区民の負担増への対応について伺います。世代間格差是正に伴う老年者控除の廃止や公的年金控除の縮小、定率減税の廃止、さらには税源移譲による住民税率の10%フラット化など、平成17年度以降の度重なる税制改正等により、高齢の年金生活者を初め、区民生活は大きな影響を受けています。しかも、こうした税制改正等は、住民税を算定基準とする国民健康保険料や介護保険料の値上げにもつながる問題であります。我が公明党豊島区議団では、こうした区民の状況を踏まえ、国民健康保険料等の所得ベースの算定方式への切替え、現在7段階となっている介護保険料の算定基準の見直し、そして住民税や保険料の減免措置の適用条件の緩和について、去る7月3日付で、高野区長に、税・保険料の負担増に伴う緊急の申入れを行ったところであります。このうち国民健康保険料については、既に、副区長会からの指示に基づき、23区の担当課長会において、所得を基本とした旧ただし書き方式の導入に向けた検討が進められていると聞いておりますので、その推移を見守りたいと思います。また、住民税と国民健康保険料の減免措置の適用条件の緩和については、豊島区独自の判断により減免基準そのものを変更することは困難であり、当面は、一層きめ細かな納付相談等により、個別の対応を強化する旨のご説明をいただいたところであります。それでは、介護保険料についてはどうでしょうか。介護保険料の所得段階や保険料の割合については、ある程度、区が独自に決めることもできると思いますが、いかがでしょうか。さらに、こうした区民税や保険料に関する区独自の対応が難しいとしても、区の一般施策により、特に高齢者や低所得者に対する負担増の軽減を図ることを検討すべきであると思いますが、区長のお考えを伺います。
決算に関する質問の最後に、決算報告書のあり方についてお伺いします。私が申し上げるまでもなく、決算と予算の関係強化は、議会の監視機能を果たす上で、大変重要なテーマであります。しかし、現在の款別の決算書・報告書等は、昔からのスタイルを守り続けており、区政構造改革の一環として、改善する余地があるのではないかと考えます。現在の資料は、個々の事業については一つ一つ細かに記載されていますが、本区の政策の要である基本計画や未来戦略推進プランとの関係について読み取ることができないのが現状です。個々の事業は、それぞれに目標としての政策があり、その手段として成果を上げるために実施しているものであります。自治法等による全国一律の制限があるのかもしれませんが、本区では、款・項・目・節ではなく、基本計画の政策体系に沿って決算報告書を編集し、区民の皆さんにもよりわかりやすく説明できるよう工夫できないのでしょうか。また、当該年度の決算とともに、複数年の決算、そして今年度の予算や新規・拡充事業についても合わせて記載することで、変化の中で決算を捉え、より効果的な審議にも寄与すると考えますが、いかがでしょうか。将来展望を含め、改善に向けたお考えを伺います。

建築に関わる紛争解決策、地区計画
2項目目に、建築に関わる紛争解決策、地区計画等について質問いたします。
都心への人口回帰が言われ、その背景には、景気の回復基調やバブル期に比較して土地の下落などにより、買いやすい価格帯でマンションが供給できるようになったことも要因の一つかと考えます。本区もその例外でなく、人口が増え税収が上がっていることは喜ばしいことではありますが、一方、住居系地域を中心に、マンション建設の高さに関わる建築紛争が多発していると伺っております。これは、建築基準法の改正で、天空率による斜線制限の緩和が原因の一つであるとも聞いております。建築物の高さの制限には、高度地区、道路斜線、日影制限のほか、絶対高さがあります。この中で、絶対高さが定められているのは、第1種低層住居専用地域内の10メートルと8地区の地区計画の区域です。こうした中で、容積率などの制限の範囲内ではありますが、建物の中高層化に伴い、建築紛争が多くなっているとも伺っております。建築主は法律を遵守して計画しておりますが、住民側の住環境に対する不安がそれだけでは解消されないことが紛争につながっているものと考えます。
そこで、現状での紛争解決の手段として本区で行っている豊島区中高層建築物の建築に係る紛争の予防及び調整に関する条例に基づいての説明会、あっせん調停について伺います。説明会・調停の場に、当事者能力を有さない仲介業者だけの参加で話し合いを進めようとするケースがよく見受けられます。これでは、住民から見れば、業者の交渉に臨む姿勢に誠意を感じることができず、条例で定められているのだから、業者は仕方なく形だけの説明会をやっているのではないかという不信感を住民は持ち、紛争につながっている現状であります。交渉の場には、当事者能力がある土地所有者、あるいは建築主等が出席する必要があると私は考えますが、区のお考えをお聞きします。他の自治体では、当事者能力を有する者の参加を義務付けているところもあります。本区においても検討できないか、お伺いします。
次に、地区計画を活用して紛争を未然に解決した事例として、巣鴨地蔵通り四丁目の地区計画がありましたが、区はこれまでどのようにして地区計画を進めてきたのか、お聞かせください。
次に、地区計画以外にも、建物の絶対高さを定める方法もあると聞いています。例えば、建築紛争の抑制を目的の一つとして、昨年、新宿区などで高度地区による絶対高さを導入し、さらに練馬区や渋谷区でも検討中だと伺っております。こうした他区の動向を含め、本区での高度地区による絶対高さ制限の導入と今後の対応について、お考えをお聞かせください。
地区計画を定めるには一定の時間がかかり、建築計画が持ち上がった後では、地元が反対の意を表しても、大幅な計画変更がされないまま建設されてしまうことが多いとの現状を聞いております。とはいえ、まちづくりを進める手法としては、地区計画はより適している制度だと考えますが、建築紛争の抑制手段として、地区計画の有効性についてのお考えをお聞かせください。
私は、以前、この建築紛争予防策という観点で、一般質問でも取り上げましたが、建築紛争が起きる原因の一つとして、建物取壊しの際の騒音と振動があり、近隣住民は業者からきちんとした説明がなされないまま解体工事が進められ、その結果、住民は迷惑を被り、その不信が解消されないまま建築工事の説明を受ける形で紛争につながっているという実態を指摘しました。現在は、一定規模以上の建物の解体工事の場合、隣接住民に説明することを要綱で定めていただきました。その点は評価しておりますが、何より紛争抑制の伝家の宝刀は地区計画だと考えます。起こってからの調停ではなく、紛争予防という観点から、大変有効な方法と考えます。行政がリーダーシップをとって積極的に関わっていくべきであると考えますが、いかがでしょうか。お伺いいたします。
次に、災害に強いまちづくりの観点から地区計画を活用できないでしょうか。先程述べた8カ所の地区計画は、ほぼ都市計画事業絡みの地域が中心です。本区は、23区の中でも人口密度がトップクラスであり、狭あい道路に接する住宅が数多くあります。狭あい道路拡幅整備事業も進めていますが、住宅の建替えが不可能な道路に接していない敷地ではこの事業も活用できないわけであり、区はこのような地域をどのようにして災害に強い街にしようと考えているのかお聞かせください。例えば、上池袋一丁目の居住環境総合整備事業地区内でありますが、幅1メートルにも満たない通路で、一方は高いブロック塀となり、火災のときの緊急車両も入って行けず、地震が起きたらどのように避難すべきかわからないといった地域があります。住民の皆さんは、考えれば考えるほど不安が募るので、考えないようにし、なるようになるという諦めの心境だと話しております。災害に強いまちづくりのためのシナリオを考えるのは、行政がリーダーシップを発揮しなければ、いつまで経っても変わりません。期間はかかるかもしれませんが、初めの一歩を進めるためにも、課題のある地域住民と研究会を開いてはいかがでしょうか、お聞かせください。

学校教育の充実について
3項目目に、学校教育についてお伺いいたします。
教育の荒廃が叫ばれて久しくなりますが、今日なお、いじめ、学級崩壊、不登校、教師の不祥事など、教育の現場では様々な問題が起きています。今こそ教育の現場が変わらなければ、日本は取り返しのつかないことになると感じています。子どもは社会の鏡といわれます。子どもが、社会が危ない、このままでは国がだめになってしまう、未来が安心できないよというメッセージを発信しているのではないでしょうか。昨年12月には改正教育基本法が公布され、その中で家庭教育が法的にも位置付けられ、学校と家庭、地域住民が相互に連携・協力した家庭教育力の向上が大変重要な課題となっております。本区の家庭教育力向上に対する考え方についてお聞かせください。
次に、教育ビジョンと教師力の向上についてお伺いいたします。昨年7月に実施した豊島区立学校保護者等意識・意向調査の結果では、区立学校への要望の問いに、「学力の向上にもっと力を」と並んで、「教員が児童・生徒との対話を大切に」が高い比率で示されています。本区は、こうした保護者の意識・意向を尊重し、これまで培ってきた実践と成果を踏まえて、教育委員会として中期的に目指す新たな教育に関する展望・方向性を豊島区教育ビジョンとして取りまとめました。中でも保護者の意向が強い、「学力の向上にもっと力を」についてお聞きします。わかりやすい授業、興味を沸き立たせる授業は、ひとえに教師力の向上にかかっています。各自治体で教師力アップのための養成塾が盛んです。さいたま市教育委員会が設立した教師力養成塾では、ベテラン教員が若手教員に不安や悩みの解決策をアドバイスし、各教科の指導主事が授業に役立つ具体的な技を提供する、モットーは、すぐに使える実効性ある研修をやっているようです。一方、本区の教育ビジョンの教育環境の充実には、教師の研修、名人先生の活用、学習専門員の巡回、大学との連携と、それぞれ記載されています。まず、本区の教師力向上に対する考え方をお伺いいたします。また、参加する先生が、解決策が得られるのではと期待できる充実した研修実施がぜひ必要であると考えています。教師力向上のための研修等の実施状況とその成果についてお伺いいたします。
次に、多忙な教員に対する支援策についてお伺いいたします。最近、特に保護者から、教員が児童・生徒との対話を大切にしてほしいという声をよく耳にします。先程の調査の結果でもそういうふうに載っておりましたが、当たり前といえば当たり前のことが、なぜこれほど要望が高くなっているのでしょうか。現在、疲弊し、壊れそうな教師が増えています。公立小中学校教員の休憩は、法的には保障されているにもかかわらず、それが満足に取れないのが現状のようです。仕事の量は多く、それも子どもと関係ない報告文書の作成に追われ、それが教員評価につながっており、評価主義、成果主義に追い立てられ、教師同士の交流も希薄になる中、学校や教師に考えられないような要求やクレームをつけてくる保護者も増えております。これほど厳しい状況に置かれているのに、教員への社会的バッシングはやみません。教師の精神疾患は、10年前の3倍だそうです。教師も、子どもたちと向き合う時間を確保することに汲々となっているのではないでしょうか。この教師の多忙感を解消する施策が必要であると考えます。こうした教員の多忙感について、区はどのように捉えているのでしょうか。お考えをお聞かせください。国も来年度から、3年間で小中学校の教職員を約2万1,000人増員する人員計画などを概算要求に盛り込む方針を固めたと記事に記載されておりました。区の新たな施策の加配と予算をお伺いします。区内大学との連携や地域人材の活用も、教員支援の有効な手立てではないでしょうか。大学連携や地域人材活用についても、合わせてお聞かせください。
次に、副校長2人制や保護者対応等についてお伺いいたします。他区の動きでは、杉並区は、事務を掌握する事務職の管理職である副校長を置くために、副校長2人制にしたり、港区では、港法曹会から選任された5人の弁護士が区立幼、小中学校から寄せられた法律に関する問題について直接相談に応じる体制を整え、相談の際は校長らが教育委員会に報告し、学校内では解決できないものについて担当の弁護士から直接アドバイスを受ける制度を発足させております。同制度の創設の背景には、保護者らが学校外の子ども同士のトラブルを学校の問題として持ち込んだり、給食費や教材費を払わないなど、学校現場だけでは解決し切れない複雑な問題が多く寄せられているという実情があり、専門家の指導を受けることで訴訟問題などに発展しないよう早期解決を図り、学校が学習指導や生活指導など本来の業務に専念できるよう支援したいとしております。杉並区のような学校支援のための事務管理職の配置や港区のような法的な支援体制についてのお考えをお聞かせください。
最後に、様々な課題が山積する今日の学校教育に対する教育長の展望をお伺いいたします。教育の目的とは何でしょうか。私は、「子どもの幸福のため」に尽きると考えます。それは、将来、一人の大人として、力強く、また、他者への思いやりを持ち、社会のため、人のために生き、各々がそれぞれの場所で光り輝くためであるといえます。教師は、そのための大事な役目を担っています。その教師に自信と勇気を与え続けている教育長に期待し、そのお考えをお聞かせください。

動物との共生
最後に、動物との共生について質問します。
最近、私は、犬の鳴き声がうるさい、飼い主が犬の糞を放置して行ってしまう、庭が野良猫のトイレになっている等々、動物をめぐる苦情をお受けすることが多くなり、保健所に確認したところ、毎日のように苦情が寄せられているとのことです。特にホームレス猫によるものが急増し、本区における18年度の苦情件数は585件で、3年前の2.2倍に達しているということです。苦情の内容を見ると、犬については散歩時の糞尿放置、猫の場合は死体処理依頼、ホームレス猫による糞尿被害が主なものとなっています。こうした現状を見ると、飼い犬、飼い猫については、やはり飼い主にその自覚と責任を徹底することが重要だと思います。また、ホームレス猫については、これ以上増やさないということと、今いる猫を管理して、糞尿被害の発生を食い止める努力をするべきだと思います。今年3月に「人と動物の共生会議」から区長に提出された提言書でも、飼い主のマナー向上のための啓発活動の推進とホームレス猫対策がその柱となっていますが、私は、もっとスピード感を持って対策を講じなければいけないと思います。
そこで、ホームレス猫対策についてお伺いします。区は、提言を受け、本年度新たに人と動物の共生事業を予算化し、10月から、不妊去勢手術費の助成、地域猫活動の支援等を実施することになりました。これまでは、2万、3万かかる手術費用をボランティアの方々の善意に甘えてきましたが、これ以上増やさないことが問題の解決策であります。また、既存のホームレス猫については、地域猫活動を奨励し、実施地域の拡大を進めるとしています。しかし、どれだけの人たちの協力が得られるのか疑問です。区ではどのような方法でこれを普及させていこうとしているのか、お伺いします。
次に、飼い主の意識・マナーの問題についてお伺いします。飼い主のマナーを確保し、適正飼養を正しく理解してもらうための方策として、ペットショップでの啓発事業の実施や、現在、保健所で実施しているしつけ教室、しつけ相談などの啓発活動をより充実すべきと考えますが、いかがでしょうか。
次に、登録制について伺います。先月、杉並区動物との共生具体化検討委員会が区に、「動物との共生プランへの提言」を提出しました。提言の中には、飼い猫の登録制度の実施が盛り込まれていました。東京都によれば、迷い犬は8割が飼い主の元に戻りますが、猫の場合は、9割が飼い主が見つからずに処分されているとのことです。飼養する動物の飼い主の明示は、動物愛護管理法等でも努力規定となっています。しかし、現状では、犬には法律に基づく登録義務がありますが、猫には固体識別の義務がないため、飼い猫であっても、迷い猫となった場合、ほとんど飼い主の元に戻らないのです。猫を登録制とすることにより、事故や迷い猫となったときに飼い主に戻りやすくなるばかりでなく、飼い主の自覚を高め、不法遺棄の減少などの効果もあると考えますが、いかがでしょうか。お伺いいたします。
以上で私の質問を終わります。長時間、ご清聴ありがとうございました。

 

区長(高野之夫

ただいまの中島義春議員のご質問に対しましてお答え申し上げます。
初めに、平成18年度決算についてお答えいたします。
まず、今後4年間の財政環境の予測でございますが、このところの民間シンクタンクによる経済予測や政府の月例経済報告などでも、景気は一部に弱さが見られるものの回復基調にあり、企業収益は増加し、個人消費も持ち直しており、先行きについては、国内民間需要に支えられた景気回復が今後も続くと見込まれております。現在の景気の動向が今後も持続することを前提といたしまして、特別区の財政に影響を及ぼすような大きな税制改正などがないとすれば、今後4年間の財政運営は、今年の2月にお示しした中期財政計画に沿って、ほぼ収支均衡したバランスのとれた財政運営が維持できるものと認識しております。
次に、財政健全化法の制定により新たな財政指標が設定されたことを踏まえ、従来の財政指標に加えて、各指標の数値の推移を把握してまいりたいと考えております。これらの具体的な算出方法につきましては今年度中に政省令の制定を経て示されることになっておりますので、算出が可能になれば、法律の施行を待つことなく、平成17年度決算及び18年度決算に基づく数値を公表するとともに、その推移を分析し、さらに平成19年度決算の予想を加えまして、将来の目標数値の設定を検討していきたいと考えております。新たな財政指標の中で、実質赤字につきましては、本区の特別会計などを加えた連結財務においても発生する余地はないと考えておりますが、いまだに多くの負債を抱える本区の特徴から推察しますと、将来負担比率の推移が非常に気になるところでございます。この将来負担比率と密接に関連したストック指標として、バランスシートに基づく世代間負担比率がございます。これは、有形固定資産の形成にこれまでの世代がどれだけ負担し、また将来の世代にどれだけの負担が残されているのかを表す指標でありますが、現状値が76%であり、残りの24%が将来世代の負担となっております。このような指標も、今後の健全な財政運営を維持するための重要な尺度となりますので、23区の状況を踏まえ、80%を超えるレベルの目標を設定してまいりたいと考えております。
次に、区政構造改革についてのご質問にお答えいたします。
私は、構造改革には2つの重要な要素があると考えてまいりました。1つは、改革が目指すビジョンを明確に示すことであり、もう1つは、従来の延長線上の修正にとどまらない、新たな仕組みをつくり上げることであります。財政健全化に向けて、各種の財政指標や職員数、基金、借入金等に関する明確な目標を定めて取り組んだこと、戦略プランにおいて、目指す人口像や重点政策に関する数値目標など、明確な将来ビジョンを示したことは、構造的な改革の促進に大きな役割を果たしたと考えております。そして、今、振り返り、私が8年間歩んできた長い道のりの中で、新たな仕組みづくりにチャレンジした主なものを申し上げますと、施設の民営化や指定管理者制度の導入、業務のアウトソーシング、第三セクターの見直し、さらには区有地における定期借地権の活用と大学の誘致、新税の導入、そして部局別枠配分予算やグループ制等による現場への権限委譲なども大きな成果を上げた取組みだったと思っております。聖域なき事務事業の見直しや忘れてならない職員の給料カットについても、強い決意を持って臨んだ取組みでございますが、構造改革というよりも、危機を回避する緊急的な措置であったと考えております。以上がこれまで取り組んでまいりました構造改革の全体像でございますが、区財政に占める施設関連経費の実像や土地開発公社を含めた多大な借入金総額など、徹底して財務情報を公開し区政の透明性を高めたことも、忘れてはならないと思います。
次に、今後の構造改革に臨む姿勢についてでございますが、財政健全化を目標とする改革について一つの区切りをつけることができた今、次なる目標は、新たな行政経営システムを構築していくことであると考えております。かつてない財政危機を招いた背景には、右肩上がりの成長を前提とした行財政システムがあり、財政危機の克服とは、単なる財政収支の赤字解消ではなく、これからの低成長の時代における新たな仕組みの構築にほかならないからであります。まずは、これまでの改革の成果と課題をしっかりと検証し、計画・評価・予算の各機能の連携強化を図りつつ、事業を重点化する機能の向上やビルド・アンド・スクラップの考え方に基づく事業再構築、決算や成果を重視した事後検証の仕組みづくりを進めてまいります。また、これから進める未来への改革は、区民にとって、そして職員にとっても、将来への希望をもたらす、元気が湧くような改革でなくてはならないと考えております。目指す地域社会の姿、そして行政の組織・サービスの姿をこれまで以上に具体的に描き、区民や民間企業との協働をさらに進めながら、変化に強い持続可能な行政経営を実現してまいります。
次に、戦略プロジェクトについてのご質問にお答えいたします。
戦略プロジェクトは、今後4年間の中で確実に成果を生み出すべき重点施策を選定し、未来戦略推進プランに位置付けるものでありまして、プロジェクトの実現に必要な事業については、来年度予算編成の中で、できる限り優先的に財源を配分したいと考えております。現時点での検討状況でありますが、福祉については、特別養護老人ホームや地域密着型サービスの基盤整備を初め、地域包括支援センターの機能強化や介護事業者の管理指導、介護支援ボランティア制度の導入、さらには障害者の就労支援や高齢者虐待防止体制の充実などを柱として検討を進めてまいります。また、子育てにつきましては、子どもスキップと中高生センターの早期整備、待機児の減少に向けた家庭福祉員制度の再構成や病後時保育を初めとする特別保育事業の充実、さらに社会性や生きる力を身につけた子どもを育むための家庭教育などについて、具体的な事業展開を議論しております。素案の取りまとめは12月を予定しておりますが、10月中旬頃には中間段階の資料等をお示しできるものと思いますので、ご意見・ご提案をいただきますようお願いいたします。
次に、部局枠配分方式の課題認識と見直しの方向性についてのご質問にお答えいたします。
平成17年度予算から導入しました部局枠配分方式は、今年度予算で3年目を経過しまして、各部局にも定着しつつあります。ご指摘のとおり、平成17年度と平成18年度の予算では、いずれもマイナスシーリングでの予算編成となりましたので、各部局にとりましては、相当厳しい編成作業を強いられたことは事実でございます。しかしながら、限られた財源を効果的に施策に投入するためには、事業に精通している各部局の責任において、明確な政策方針に基づいて、事務事業を見直し、事業の選択と集中を図り、その上で区民需要に的確に応える施策の重点化が必要不可欠でございます。この点が従来の各事業ごとの査定方式にはない最大のメリットであり、部局の政策形成力の向上にも資すると考えております。なお、今年度予算から、部局の予算編成方針と重点施策を公表し、部局における予算編成の透明性の向上に努めておりますが、この点も部局枠配分方式による効果といえるのではないかと思います。また、縦割りの強化につながるとのご懸念につきましては、部局予算の編成過程で、基本計画との整合性や部局間の連携・協力などにつきまして、私と副区長による審査や調整が組まれておりますので、弊害は生じないと考えております。
部局枠配分方式の今後の課題と見直しについてでございますが、部局による予算執行の評価方法とその評価を次の予算に反映するシステムの構築が大きな課題でございます。各事業ごとの成果指標の設定もさることながら、多種多様な施策の優劣を判断する共通基準の設定が必要となりますが、予算に反映するための客観的、かつ適正な基準の設定が今のところ困難でありまして、引き続き、今後の検討課題となっております。また、インセンティブ制度の導入につきましては、これまで決算剰余金の一定割合を部局の経費節減努力に応じて配分する方式や人件費削減効果の配分などを検討してまいりましたが、いずれも時期尚早として見送っております。決算剰余金につきましては、地方財政法第7条の趣旨に基づき、将来の備えとして、2分の1を財政調整基金へ積み立てることを優先し、また人件費削減効果額につきましては、義務的経費の増加部分に充当するほか、基本計画の重点施策に投入することを優先したものでございます。いずれにいたしましても、部局枠配分方式は、3年を経過したところで、改めて検証し、成果と課題を整理いたしまして、部局の持つ力が最大に発揮できるように、方式の見直しを図ってまいります。
次に、決算報告書についてのご質問にお答えいたします。
一つ一つの事業は、政策を実現するための手段でございまして、基本計画や戦略プラン、そして個別の分野別計画が設定する政策目標に照らして、初めて事業の効果や成果についての的確な検証が可能となるものであります。基本計画の政策体系に沿った決算報告書の編集や複数年度の決算と予算の推移を比較可能とすることなど、より効果的な決算審査に向けたご提案をいただきましたが、私も、現在の決算関係書類には、改善の余地があると考えております。こうした思いから、未来戦略推進プランでは、巻末資料として、基本計画の政策別に財源の配分状況を示した予算・決算マトリックス表を掲載しているところであります。現在の決算関係書類のうち、各会計歳入歳出決算書及び各会計決算参考書については自治法上の制約がありますが、主要な施策の成果報告については特段の制約があるわけではございません。ご提案を踏まえまして、庁内にプロジェクトチームを設置いたしまして、政策との関係を明確にした成果報告の編集方針について、検討を進めてまいりたいと思います。
私からの答弁は以上でございますが、その他の質問につきましては関係部長から、教育委員会の所管に属する事項につきましては教育長から答弁させます。
保健福祉部長(松﨑充彦)
まず、介護保険料の所得段階や保険料の割合を区独自に決定することについてのご質問にお答えいたします。
第1号保険料は、政令で定める保険料率の設定の基準に沿って、3年ごとに区が条例で設定することになっていますが、お尋ねの所得段階や保険料の割合につきましては、いずれも平成18年度より、区が独自に決定することが可能となっています。そこで、平成18年度から20年度の第3期の保険料は、所得段階を、国基準では6段階ですが、本区では7段階としております。また、保険料率も、国基準では基準額の0.5倍から1.5倍になっていますが、本区では0.5倍から1.75倍としております。その結果、本区では、所得に応じた累進性は、国基準より高まっております。なお、次期、第4期の保険料改定の際には、できるだけ保険料の増額を抑えるとともに、より累進性を高め、低所得者の方に配慮した保険料の設定に努めたいと考えております。
次に、高齢者や低所得者に対する負担増の軽減についてのご質問にお答えいたします。
ご指摘のとおり、高齢者や低所得者の方に負担感が増加していることは、区といたしましても十分認識しているところでございます。区では、緊急通報システム事業などにおいて、低所得者への負担軽減措置を図ってまいりましたが、これまで一律にご負担をお願いしてまいりました寝たきりの高齢者に対し理美容業者を派遣する理美容費助成事業や在宅の高齢者に実施している寝具類洗濯乾燥事業などにつきましても、低所得者への負担の軽減措置を検討してまいります。また、介護保険事業においては、ボランティア活動の実績をポイントとして評価し、それを介護保険料等に充当する介護支援ボランティア事業が平成19年度より地域支援事業として位置付けられました。この事業についても、元気な高齢者の地域参加による介護予防効果に加え、そのポイントを介護保険料に充当することで保険料の負担軽減をねらったもので、本区におきましても平成20年度に実施することを検討しております。 私からの答弁は以上でございます。

都市整備部長(増田良勝)
まず、説明会、あっせん調停に当事者能力がある者が出席すべきとのご質問にお答えいたします。
豊島区中高層建築物の建築に係る紛争の予防及び調整に関する条例では、建築主の定義を「中高層建築物に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう」と規定しております。建築主の定義につきましては他区も同様でありますが、説明会への出席者の範囲や調停に出席を求める当事者代理人の範囲について細かく定めている区もあります。最近では、調停に参加する住民の方や説明会に参加される地域住民の方から、要望事項に責任を持って回答できる建築主の参加がないことへの疑問の声が区に寄せられることも数多くございます。こうしたことから、説明会や調停などに出席できる建築主等の範囲について、弁護士等の専門家の意見も踏まえ検討してまいります。
次に、区はこれまでどのようにして地区計画を進めてきたのかとのご質問にお答えいたします。
これまで地区計画は8地区で決定しておりますが、その取組みにつきましては、手続きに入るきっかけとなった理由として、大きく2つに分類できます。1つ目は、都市計画道路の整備に伴い、沿道の居住環境が大きく変化してくることが予測される場合であります。例えば、平成15年には補助172号線整備に伴い立教大学南地区を、平成17年には補助173号線整備に伴いその周辺地区などを決定いたしました。都市計画道路の完成に合わせ、良好な街並み景観を形成していくために、地域の新たなルールとして定めたものであります。2つ目は、街づくり推進条例に規定された申出制度により、地域の発意で地区計画手続きに入ったものであります。ご指摘の巣鴨地蔵通り四丁目地区がこれに当たります。住民からの申し出による地区計画は、当時としては23区の中で初めてのケースでありましたので、関係者からも大変注目されました。このように、手続きに入るきっかけに違いがありますが、住みよいまちづくりを目指し、生活に密着したローカルルールとして、地区計画を定めてまいりました。
次に、高度地区による絶対高さ制限の導入と今後の対応についてのご質問にお答えいたします。
平成14年の都市計画法改正により、建築物の絶対高さを定める高度地区が新たに設けられ、現在、23区中9区で導入されております。この制度の具体的な実施については、東京都の運用基準により、標準的な建築計画に対して指定容積率が活用できる高さを基本として定めることになっておりますので、地区計画に比べ、高めの設定となります。したがいまして、建築物の高さのみを制限するのではなく、用途規制や敷地面積の最低限度など、土地利用に関わる多様なルールについて、合意を図っていくことが重要であると考えております。
次に、建築紛争を抑制する手段としての地区計画の有効性についてのご質問にお答えいたします。
建築計画が持ち上がってから地域の方々が地区計画の策定に向けて動き始めましても、現実的には合意形成に一定の時間が必要なことや権利者に著しい不利益を及ぼさないなどの条件がありますので、建築工事が着工されてしまう実情があります。しかしながら、建築計画が浮上する前の段階から、地域でまちづくりに取り組み、地域の新しいルールを定めておくことは、建築紛争の予防という新たな視点からの対応が可能となり得ますので、地域の意向を踏まえ取り組んでまいります。
次に、行政がリーダーシップをとって積極的に関わっていくべきとのご質問にお答えいたします。
巣鴨地蔵通り四丁目地区は、建築に関する紛争がきっかけでしたが、地元商店街が中心となり、連日に及ぶ議論の末に、建築物について、高さの最高限度を定めるだけではなく、地域の歴史に配慮した外観にするなど、ローカルルールが定められました。手続きの過程では、権利者に著しい不利益を与えることがないよう配慮しながら合意を築くために、勉強会が重ねられたと伺っております。結果として、建築紛争の対象となった事業者からの協力も得られ、高さの最高限度を25メートル以内に抑えるなど、建築計画の変更に結びついております。したがいまして、街づくりコンサルタントの派遣や活動費の助成など、地域を支援する具体的な制度も整えておりますので、街づくり推進条例によります申出制度をより多くの区民の方々にご理解いただき、地域特性を生かした住みよいまちづくりを目指してまいります。
次に、災害に強いまちづくりに地区計画を活用できないかとのご質問にお答えいたします。
まず、建替えが不可能な敷地への対応についてお答えいたします。建替えのできない住宅地を地区計画だけで改善することは、道路等の地区施設の合意形成が必要なことからも非常に困難です。このような自力更新が望めない密集市街地を災害に強い街にするためには、道路の新設や拡幅整備、あるいは共同建替えへの誘導などの面的な整備が有効と考えています。これらの整備と合わせ地区計画を導入することによって、地域の特色を生かしたまちづくりを展開することが、より効果的であると考えます。
次に、地域住民との研究会の開催についてお答えいたします。住宅密集地を防災性の高い街にするための面的な整備には、地元地権者の方々の協力が必要不可欠となります。現在、居住環境総合整備事業地区内で運営しておりますまちづくり協議会はもちろんのこと、ご提案にありますような地元地権者の方々を対象とした研究会につきましても、必要に応じて共同で開催するなど、積極的に支援し、災害に強いまちづくりに引き続き取り組んでまいります。 私からの答弁は以上でございます。

 

子ども家庭部長(横田勇)
家庭教育力向上に対する考え方についてのご質問にお答えいたします。
子どもの育成と教育は、家庭と学校と地域、そして行政がそれぞれの役割と責任を着実に果たしながら連携・協力していくことにより、初めて成果が得られるものであります。中でも、家庭における教育は、子どもが基本的な生活習慣や躾を身につけ、物事の善悪の基礎的な判断力を培い、人との関わりの基本を修得するなど、子どもの人格形成の基礎づくりを行う重要な役割を担っております。しかし、家庭の教育力の低下により、就学時期になっても基本的な生活習慣が確立できていなかったり、人との適切なコミュニケーションを図れなかったり、集団の中では当たり前のルールを守れなかったりする子どもが増えてきております。改正教育基本法は、子どもの教育について、保護者が第一義的な責任を有することを明確にしましたが、家庭が本来持たなければならない基本的な力を回復・向上させていくことは、大きな課題であると認識しております。そのため、従来から学校現場や保育園などで家庭教育の向上のために親へ働きかけてきているところでありますが、今年度からさらに組織的な取組みを強めるため、教育委員会の各課を含む関連19課で構成する「子どもの施策調整会議」において、家庭教育の支援に向けた取組みを検討し、調整するとともに、各課における施策の進捗状況を管理していきたいと考えております。家庭の教育力の回復・向上は時間のかかる困難な課題ではありますが、子ども・家庭施策における重点課題と認識し、各課において家庭教育力向上に関する諸施策を精力的に推進してまいります。私からの答弁は以上でございます。

 

池袋保健所長(永井惠)
動物との共生についてのご質問にお答えいたします。
まず、地域猫活動の普及方法についてであります。地域猫活動は、ホームレス猫を増やさないために、地域全体の合意の下にルールを決め、不妊去勢手術を施した上で、区民が協力して、えさやり、糞の清掃などの飼育管理を行うボランティア活動であります。ご質問にもありますとおり、この活動を普及させていくためには、ホームレス猫に関わるトラブルが発生している地域において、活動の趣旨を十分に説明し、地域全体の理解を得るとともに、活動に協力する人材を確保することが必要です。このため、区では、3月に「人と動物の共生会議」から提言書を受けて以降、地域猫活動のモデル実施に向けて、町会を初め、動物を愛する会、動物愛護推進員、ボランティアなどの参加を得て、意見交換会を月1、2回行っております。その中で、地域猫活動の進め方や実施地域の選定について話し合いを重ね、10月から上池袋三丁目と千川一丁目の2つの地域でスタートする予定であります。今後、広報、ホームページを初め、区政連絡会や地域猫活動説明会でPRする一方、ホームレス猫に関する苦情が多い町会等に活動の実施を働きかけ、地域猫活動の普及に努めてまいりたいと考えております。
次に、啓発活動の充実についてであります。適切なマナーと十分な飼育知識を持った飼い主を増やしていくためには、ご指摘のとおり、飼育のスタート段階での啓発が効果的です。そこで、11月より、新たに区内39のペットショップにおいて、飼い主に対し、飼い主のマナーなどを記載したパンフレットの配布、事業者による指導を実施する予定です。また、しつけ教室につきましては年1回開催しておりますが、飼い主への啓発を強化する観点から、動物を愛する会との共同で月1回開催しておりますしつけ相談と統合し、来年1月より、毎月、飼い主への啓発・相談の機会を設けてまいります。さらに、広報・ホームページでのPRのほか、動物病院でのポスター掲示、パンフレット配布など、様々な媒体を通じて啓発に努めてまいりたいと考えております。
次に、登録制についてですが、ご指摘のとおり、猫につきましては、登録義務がなく、飼い主を特定できる表示を付けているケースはほとんどありません。このため、猫が事故に遭ったり、迷子になった場合でも、ほとんどの猫が飼い主の元に戻ることができず、平成18年度の東京都動物愛護相談センターの実績でも、引き取った猫の多くが致死処分となっております。ご質問にありますように、猫の登録制は、飼い主の責任が明確になり自覚が高まる、事故や迷い猫となった際に飼い主の元に戻りやすくなるなど、一定の効果があると認識しております。現在、全国13の自治体で登録制を実施しておりますが、犬と異なり任意であるため、登録率が低い、登録後に住所変更等があってもほとんど申告がないなどの問題も生じていると聞いております。区といたしましては、今後、既に実施している自治体の状況を十分に分析しながら、登録制の実効を上げる方策がないかどうかを含め、検討してまいりたいと考えております。
私からの答弁は以上でございます。

 

教育長(日高芳一)
引き続きまして、教育委員会の所管に属する事項に関するご質問に対してお答え申し上げます。
まず、教育ビジョンと教師力の向上についてのご質問にお答えいたします。
ご指摘のとおり、学力の向上を図るためには、教師力の向上が不可欠であります。とりわけ若手教員の人材育成が急務であり、名人先生といった経験豊かな教員や元校長などの指導力を活用し、実践力を確実に身につけるための研修を実施しております。今年度の夏季休業中の研修では、32講座、延べ763名の教員が受講しました。中でも、授業力向上研修会では、日々の授業づくりに直接生かすことを目的とした模擬授業や教材開発を通して、教員が切磋琢磨し、指導技術を向上させております。さらに、立教大学理学部と連携した理科実技研修会では、専門性のある大学教員の指導により、教員自らが実技を通して学び、児童・生徒の意欲を高める授業づくりについて理解を深めました。これらの成果を踏まえ、今後も教員研修や教員相互の研究活動の活性化を一層推進してまいります。
次に、教員の多忙感について、区はどのように捉えているかというご質問にお答えいたします。
教師の仕事は、将来を担う子どもたちを育てることであり、ここまででよい、このくらいでよいという限度がありません。つまり、これでもか、これでいいかの連続であります。文部科学省においても、平成18年度に行った調査において、教員の残業時間が大幅に増加していることから、現在、教員定数増員や外部人材活用について検討されております。加えて、議員ご指摘のとおり、いわゆるモンスターペアレンツといわれる保護者などの対応が教員の多忙感を増幅させていることも事実でございます。そこで、各学校においては、校務分掌を整理・統合したり、会議の回数を減らしたりすることにより、子どもに向き合う時間の確保に努めております。また、本区では、学級補助員や少人数指導講師などの非常勤職員や臨時職員の配置を行い、外部人材を投入することで、職員の負担軽減に努めております。今後は、国や都の動向を見据えつつ、来年度の予算編成に向け、区として非常勤職員等の効果的な活用と拡充について検討してまいりたいと考えております。
次に、大学連携や地域の人材活用についてのご質問にお答えいたします。
大学連携や地域の人材活用については、学校支援のための確かな手立ての一つであると考えております。現在、区内大学と連携し、学習のサポート、配慮を要する子どもへの支援、学校行事への協力など、学校の実態に応じた様々な活動が展開されております。大学にとっては、教職を志望する学生が体験的に学んだり、自らの研究の成果を実践に生かしたりする場として、有効な機会となっております。11月19月に予定されております区内6大学と豊島区との包括協定締結の後は、さらに教育連携の拡充を図ってまいります。また、地域人材の活用は、総合的な学習の時間の充実や部活動の活性化に欠かせないものとなっており、教員が児童・生徒の指導に一層力を発揮できるよう、協力を求めてまいります。
次に、副校長2人制や保護者対応等についてのご質問にお答えいたします。
現在、学校だけでは解決できない問題が発生した場合には、学校と教育委員会、警察、家庭支援センター、スクールカウンセラーなどの関係機関によるサポート会議を設置し、対応しております。教育委員会といたしましては、学校支援のための事務管理職の設置や弁護士相談制度の導入等は考えておりませんが、関係機関との連携を一層強化し、今後も、適切な対応に努めてまいりたいと考えております。
最後に、様々な課題が山積する今日の学校教育に対する展望についてのご質問にお答えいたします。
私は常々、教育は、物づくりではない、人づくりであると述べてきました。教育基本法にありますように、教育の目的は、人格の完成を目指し、知識と教養を高め、豊かな心を培い、健やかな体を育てることにあります。子ども一人一人の個性を伸ばし、将来、一人の社会人として社会に貢献できる人間を育てていくことが、学校の果たすベき役割であり、教師の崇高な使命と考えております。教師一人一人が誇りと自信を持って教育に当たらなければ、子どもたちの未来は輝くものとはなり得ません。先程、大きなエールをいただきました。これからも、教育委員会として学校を支え、教師に自信と勇気を与え、「夢に向かって 未来を切り拓く としまの子」の育成を確実なものとしてまいりたいと考えております。
以上をもちまして、中島義春議員のご質問に対する答弁を終わります。